【実在の未解決事件がモデル】深町秋生『鬼哭の銃弾』あらすじ/感想
「果てしなき渇き」や、
「ヘルドッグス」シリーズなど、
ハードボイルド系の骨太で読み応えしかない作品を世に送り続けている深町秋生。
最新刊が文庫化され発売されています。
深町秋生『鬼哭の銃弾』
✅ 日本で実際に起きた凄惨な事件、この未解決事件をモデルにした警察小説
✅ 1995年にある程度の年齢だった人なら、記憶に残っているであろう事件
✅ 本書はフィクションだが、物語は生々しい
1995年、
私はおじさんなので、この未解決事件はしっかりと記憶に残っておりました。
3人を襲った非情の銃弾・・・。
興味深く一気読みさせていただきました。
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【実在の未解決事件がモデル】
【八王子スーパー強盗殺人事件】
1995年(平成7年)7月30日夜、
東京都八王子大和田町にかつて存在したスーパーマーケット「ナンペイ大和田店」事務所内で発生した拳銃使用による強盗殺人事件。
〈概要〉
1995年7月30日21時17分ごろ、
スーパー「ナンペイ大和田店」の2階事務所内で拳銃を持った何者かに女性従業員3人が射殺された。
被害者はパート女性従業員A(47歳)、
同アルバイト女子高生従業員B(17歳)、
同アルバイト女子高生従業員C(16歳)。
犯行時間は21時15分から数分間に起こったと推定。
3人とも脳幹を正確に撃ち抜かれ、即死状態。
銃撃後、犯人は金品などを何も奪わずに逃走。
金庫を開けようとした形跡はなく、その他の現金や貴金属類、被害者の持ち物には手をつけておらず、
事務所内を物色した形跡すらも無いことから、犯行は金銭目的ではない可能性も。
使用された拳銃は、
フィリピン製のスカイヤーズビンガムとされている。
2010年4月27日、
殺人罪・強盗殺人罪など最高法定刑が死刑の罪について、
公訴時効を廃止した上で遡及適用する改正刑法及び刑事訴訟法が施行され、
2024年の今現在でも、
警視庁八王子警察署特別捜査本部は、
「八王子スーパー強盗殺人事件」を長期捜査を継続中。
強盗説、怨恨説の両面で捜査を行なっている。
銃器について、
これまでは主に暴力団やテロリストのみが用いてきたが、
「東京郊外の小さなスーパーで働く普通の市民」に向けられ、容赦無く殺罪した事件の性格から、
日本警察は、
「日本における銃犯罪のターニングポイント」とこの事件を位置付けている。
参照元:wikipedia-八王子スーパー強盗殺人事件
「未解決事件」
と、
物語の冒頭部分、
「男はセダンを降りた。そこは小さなスーパーの駐車場だ。もともと照明の類が設置されておらず、夜九時を過ぎた今は深い闇に包まれている。」
この2つで、
私のようなおじさんは「八王子スーパー強盗殺人事件」を思い出してしまうぐらい、
強烈に記憶に刷り込まれている事件です。
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深町秋生『鬼哭の銃弾』
深町秋生『鬼哭の銃弾』
帯
愛と暴力と裏切り200%
未解決事件は魔物!
人生を狂わされた刑事の親子が、極悪非道の真犯人に鉄槌を喰らわす
あらすじ
『鬼哭の銃弾」あらすじ
府中市内で起きた発砲事件。
弾丸の線条痕を鑑定した結果、
使われた銃が22年前の事件で使用された可能性が出てきた。
スーパー「いちまつ」で店長・パート・バイトの3人が射殺され金が奪われた未解決事件。
この1件の捜査を任されたのが、
警視庁捜査一課殺人犯捜査三係の日向直幸。
直幸の父・繁も刑事時代に追いかけており、
捜査にのめり込むあまり、
DV野郎に堕ちて家庭を崩壊させ、
直幸と音信不通状態だったが、
警視庁を退職してもなお、
繁は独自に事件を追いかけ続けていた。
父親を恨み続けながら刑事となり、未解決事件を捜査することになった直幸。
家庭を壊し、刑事を辞めた後も未解決事件を追いかけている父・繁。
親と子の繋がりは皆無だが、
事件が2人を無情にも繋げていく結果に・・・。
22年もの間、
迷宮入りしていた事件が一気に動き出す。
〜『鬼哭の銃弾』〜
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おじさんの感想
日本に実在している未解決事件、
「八王子スーパー強盗殺人事件」をモデルにした警察小説、
深町秋生の『鬼哭の銃弾』、
読み応えバッチリです。
もちろん実話ではなくフィクションなので、未解決事件の真相的な楽しみ方をできるはずはないんですけど、この物語のプロローグを読み進めていると、
妙に生々しい描写を突きつけられてしまうから、
実話なんじゃないかと勘違いしそうになってしまいます。
特に私のようなおじさん世代は。
あの当時感じた得体の知れない恐怖も蘇るような・・・。
こんな状態で読み進めていき、
現実とリンクさせながらいつの間にか、深町ワールド全開のハードボイルド警察小説として満足感を得たまま読了となった『鬼哭の銃弾』。
「八王子スーパー強盗殺人事件」を覚えている方なら、
読み進めてみてもよろしいのではないかと。
あくまでもフィクションだけど、
事件のwikiをガッツリ読み込んでしまうぐらいには響いてきますからね。
現実の世界では未解決のまま・・・。
小説の世界でだけ事件の真相が明らかに・・・、興味深い物語でした。
あと、
これは関係ないんですが、
私は、クエンティン・タランティーノ監督作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を何となく思い出していまして・・・。
「ワンス・〜」はですね、
実際に起きた事件の結果を、映画の中だけで覆しているんです。
異様な復讐心を犯人グループに叩きつけるように。
実在した人物が巻き込まれた事件という実話を、
タランティーノ風に味付けし変換した映画が「ワンス・〜」。
『鬼哭の銃弾』も、
実在している未解決事件をモデルにしつつ、
深町ワールドの中に落とし込んで変換し、ある1つの真相に辿り着かせた物語だったのではないか、
そんな風に感じました。
万人受けする警察小説、とは言い難いですけど、
1995年を生きて来たあなたにならオススメできる1冊です。
最後に
実在の未解決事件をモデルにした警察小説、
深町秋生の『鬼哭の銃弾』を紹介させていただきました。
1995年、
日本にとって大変な1年でした。
「阪神・淡路大震災」「地下鉄サリン事件」など、
いまだに記憶に新しいと感じてしまう大きな出来事がたくさんあった1年です。
その中の1つが、
「八王子スーパー強盗殺人事件」。
女性3人が犠牲になった凄惨な銃撃事件。
私は『鬼哭の銃弾』を読んで思い出しましたし、
これからも忘れることはないと思います。今はただ、事件の解決を願うのみ、ですね。
ではまた。