現代版「罪と罰」、盛田隆二が描く日本のリアリズム『蜜と唾』

文庫の帯には、

ブラック企業非正規雇用シングルマザー
DV・・・・。
リアリズムの名手が日本を舞台に描いた、
これは現代の【罪と罰】」

こんな風に記載されています。

盛田隆二の『蜜と唾』。

紹介させて頂きます。

 

現代版「罪と罰」、盛田隆二の『蜜と唾』

 

蜜と唾』 盛田隆二

蜜と唾あらすじ

築30年を超える老朽化したワンルームマンションに住む梶亮平
ウェブ上で記事を書いて生計を立てているライター。
亮平の書いたブラック企業体験ルポが雑誌に載った直後、
携帯から聞こえたてきたのは、4年ぶりに聞く声
かつて、亮平が家庭教師をしていた拓海の母親、美帆子の声
雑誌に載った記事のお祝いで、再会の約束をして携帯を閉じる。
5年前、
美帆子の息子拓海は交通事故で亡くなった。
家庭教師の仕事も終わり、それ以来、
美帆子とは連絡を取っていなかった亮平。
あの事故は、美帆子にも亮平にも辛く、黒い傷を心に負っているはずなのに。
携帯から声を聞いた2ヶ月後
亮平の元に刑事が訪ねてくる・・・。

〜『蜜と唾』〜

 

・梶亮平(かじりょうへい)
亮平の主な仕事はウェブライター。
IT、ゲーム、健康、ペット、アパレル、食品、通販、出会い系などなど、
ここ3年ぐらい、手当たり次第に仕事をこなして生計を立てていました。
亮平の書いたルポが雑誌に掲載された直後から、
不思議と亮平の周りは色合いを変えていきます

・美帆子(みほこ)
華奢な体つきで童顔。昭和の女優を思わせる美人
雇われママとしてバーを経営しています。
5年前に息子を亡くして、離婚。今は家具専門店の経営者と再婚しています。

美帆子は雑誌に掲載されていた、
かつて息子の家庭教師をしていた亮平の記事を見つけ、
お祝いの電話を。そして再会の約束

亮平は美帆子と4年ぶりに携帯で話しただけ、
再会しただけなんですが、

亮平の生活はちょっとずつ変化させられていきます。

再会から、新たな出会いがあって、
淡々とした日常が少しずつ侵食されていくような出来事の数々。

その全てに美帆子の影がチラついて、
亮平の思考は停止する事なく、
疑問、疑い、信じて、また疑問、疑い、そしてまた信じる。

初めて刑事と喋った時でさえ・・・。

日常を少しずつ侵食されるような出来事の全てに、
美帆子が絡んでいるのか、それとも、ただの偶然なのか、

そして、
亮平は巻き込まれただけなのか・・・。

リアリズムの名手盛田隆二が描く犯罪小説、
蜜と唾
ある女性の周りで溺れてしまう男たちの物語です。

 

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『蜜と唾』を読んだ方達のレビューを、紹介します

 

『蜜と唾』を読んだAさんのレビュー

魔性の女とはまた違う・・・なんとも不思議な魅力の女性です。
深入りしたらダメなタイプですけど、分かってても翻弄される男どもの気持ちもわかる気がw
ライターも駆け出しともなると生活は大変ですね。

 

 

『蜜と唾』を読んだBさんのレビュー

多分、ミステリーと思って読んでしまったのがいけなかったんだと思います。
いわゆる魔性の女に手玉に取られる男たちを描いた物語なのでしょうが、
謎らしい謎がないと途端に苦手な分野になってしまうので・・・。
ただ、装丁とタイトルは本当に素晴らしいです。

 

 

『蜜と唾』を読んだCさんのレビュー

久々の盛田さん。期待して読んだのですが・・・。
なんか物足りないような気がします。
美帆子にイライラしっぱなし。ストレスが溜まりました。魔性の女?にしては中途半端ですし。
息子を事故で亡くした母親なら、もっと打ちひしがれていると思うのに、
何故か悲しさが伝わって来ないです。
男を手玉に取るにも詰めが甘いと思うし、いくら美人でもねぇ・・・。
違和感を感じる作品であったように思います。

 

『蜜と唾』を読んだおじさん

 

この作家さんの「小説」を読んだのは初めてでした。
完全なジャケ買い、気になってしまったので。
久しぶりに表紙だけを見て買ってしまった感じです。

 

物語は、ミステリーでもないしサスペンスでもない、
犯罪小説としては凹凸の無さすぎるストーリーなんですが、
読み進めるのはあまり苦ではない、淡々としたものでしたね。

 

ただ、
読んでて思ったのは、
時として、女性が決断するその冷酷なまでのハッキリさと、
そのハッキリしている思考に、男が踊らされる事がある、そんな思いを抱きました。
現実を直視できるのが女性で、幻想を追いかけるのが男

幾つになっても男は、幻想を抱きながら独占欲まで所有してしまっている。
振り回されるはずですよね、見ているようで見ていない、そんな状態じゃ・・・。
ちょっとだけ、『蜜と唾』を読み終わってから怖くなりました。
そういえば、私も男だったと。

 

初めて読んだ作家さんの「小説」、
淡々とした凹凸の無いストーリーが展開されていきますが、
男ならちょっと怖くなる物語です。
なんとなく納得しながら読み進めてしまい、読了。
ミステリーと思わずに、
現実を生きる女性と、幻想の中でしか生きられない男たちの物語
そんな風に読み進めて頂ければなと。
蜜と唾』、男だとちょっとだけ怖くなってしまいますね。

 

 

盛田隆二について

 

盛田隆二(1954年12月23日〜)は、
日本の作家です。

主な作品は、

発売年 出版元 タイトル
1990年 講談社 ストリート・チルドレン
1992年 中央公論社 サウダージ
2004年 角川文庫 夜の果てまで
2010年 光文社 二人静
2011年 身も心も
2016年 双葉社 父よ、ロング・グッドバイ 男の介護日誌
2019年 光文社文庫 蜜と唾

1990年のデビュー作「ストリート・チルドレン」、
第12回野間文芸新人賞候補

1992年の第2作「サウダージ」、
第5回三島由紀夫賞候補

2004年に角川文庫から出版された「夜の果てまで」は、
30万部のベストセラーとなっています。

2011年の「二人静」で第1回Twitter文学賞(国内編第1位)を受賞しています。

 

最後に

 

初めて読んだ作家さんの「小説」、

盛田隆二の『蜜と唾』を紹介させて頂きました。

文庫の表紙と、
帯に書かれている「罪と罰」で購入をし、
淡々とラストまで読み進めました。

ドフトエフスキーのファンという事ではないんですが、
現代の「罪と罰」と言われると、ちょっと気になってしまったので。

蜜と唾』は物語自体、そこまで凹凸のあるストーリーではありませんから、
感情の起伏は緩やかだと思います。
スラスラ読めてしまう、そんな物語です。

なんていつまでも女性に振り回される
そんな怖さは感じられますけどね。

ではまた。

 

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