ステフ・チャ『復讐の家』あらすじと感想、実際に起きた事件が題材に・・

1991年、
ロサンゼルス郊外のサウス・セントラル地区で、
実際に起きた事件を題材にした小説。

ステフ・チャ『復讐の家

復讐の家

✔︎ ある黒人少女が、
小規模な雑貨・食料品店で、韓国系アメリカ人によって後頭部を背後から銃撃され死亡

✔︎ 裁判の結果、加害者側の量刑は大幅に減刑

✔︎ 加害者側の家族、被害者側の家族に28年間という時が流れ、
1つのキッカケから再び、
28年前の事件が蘇ってくる

✔︎ アメリカ社会における人種間の軋轢・・・

何十年という時間が流れたとしても、
癒されない傷というのは存在するんですね・・・。

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ステフ・チャ『復讐の家』

ステフ・チャ『復讐の家

登場人物
グレイス・パーク
(韓国系アメリカ人女性の薬剤師、27歳)

ミリアム・パーク
(ウェブライター、グレイスの姉)

イヴォンヌ・パーク
(グレイスとミリアムの母)

ポール・パーク
(グレイスとミリアムの父)

ショーン・マシューズ
(運送会社勤務の黒人男性、41歳)

エイヴァ・マシューズ
(ショーンの姉、悲しい事件の被害者

レイ・ハロウェイ
(ショーンの従兄弟、仮釈放中の元ギャング)

ニーシャ
(レイの妻、ロサンゼルス国際空港勤務)

ダリル
(レイとニーシャの息子、16歳)

ダーシャ
(レイとニーシャの娘、13歳)

シーラ・ハロウェイ
(レイの母、ショーンの伯母)

ジャズ
(ショーンの恋人、看護師)

モニーク
(ジャズの娘、3歳)

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あらすじ

復讐の家』あらすじ

ショーン・マシューズの側には、
頼りになる姉エイヴァが、いつも一緒にいてくれた。

ちょっと口うるさい姉だったけど、
遊んでいても、少し大人びた悪さをした時でも、
エイヴァはいつもショーンの味方でいてくれた。

あの日までは・・・。

28年前のあの日、1991年

ある韓国系アメリカ人が経営している食料雑貨店へ、
エイヴァと2人で牛乳を買いに行っただけだったのだが、
唐突に訪れた銃声と、
その後、唐突に訪れた静粛の中で、
ショーンはエイヴァを失った。

あれから28年、
すっかり大人になったショーンの元に、
またしても唐突な一報が舞い込んできた。

「28年前にエイヴァを殺した韓国人女性が、何者かに撃たれた」

28年という長い間、
ひと時も忘れたことのない姉の存在と、その姉を殺した人間。

ショーンの足元に、
1歩ずつ歩み寄ってきた「復讐」という2文字。

望んでいる訳ではなかった・・・と言ったら嘘になる。
けど、
エイヴァはもう帰っては来ない。

28年の時を経て、
ショーン・マシューズたち「家族を失った」ものたちの人生と、
韓国系アメリカ人の家族「消えない罪を背負った」ものたちの人生が、
ある一報から交わっていく・・・。

復讐の家

 

1991年:実際に起きた事件

ラターシャ・ハーリンズ(1975年7月14日〜1991年3月16日)は、
15歳の時、
ロサンゼルスにあった韓国系アメリカ人夫婦が経営する商店で、
万引き犯と疑われ、その結果、
店主に背後から後頭部を銃撃され死亡した黒人少女です。

1991年3月16日

 

✔︎ 韓国系アメリカ人のトゥ・スンジャと夫が経営する小規模な商店、
「エンパイア・リカー・マーケット」で事件は起きました。

 

・この日、店を訪れたハーリンズは、
オレンジジュースのボトルを自分のバックパックに入れたところを店主(トゥ・スンジャ)に目撃された。

 

・バックパックに隠した訳ではなく、ボトルは見える状態だった。
(後の証言、監視カメラ映像により確認)

 

・店主への断りがなかったのは事実だったが、
ハーリンズは窃盗をしたとみなされ、店主と揉めることに。

 

・ボトルを盗んだと主張する店主、
支払いをするつもりだったと主張するハーリンズ。

 

・店主がバックパックに手をかけたため、ハーリンズは店主の顔を2度殴打。
店主は椅子を投げつけるなどの行為。

 

・さらに大声で、ハーリンズは支払いをするつもりだったと主張。
重ねて店主は万引きだと非難。

 

・ハーリンズはボトルをカウンターに置き、
店を立ち去ろうとしたが、店主が追いすがって2人はまたしてももみ合いに。
ハーリンズは店主の顔を4度殴打。

 

・ここで店主のトゥは、
カウンターの下に置いておいた銃を手に取り、
店を出て行こうとしていたハーリンズに向かって背後から発砲

 

・警察が到着した時、すでにハーリンズは死亡しており、
彼女の左手には、ボトル代2ドルの紙幣が握られていた・・・。

この事件の裁判で証拠として採用されたのは、
店内にいた9歳と13歳の幼い姉弟の証言と、音声のない10数秒程度の監視カメラの映像のみ。
(この姉弟が、ハーリンズの身内かどうかは、文面から読み取れませんでした)

評決

 

・当初、「有罪」とみなされていたトゥへの判決は、
最長で11年の懲役となる可能性があった。

 

・しかし、判決は覆され、
5年間の保護観察処分(執行猶予付き懲役)、
400時間の社会奉仕、
500ドルの罰金となり、大幅に減刑されたものとなる。

当時のカリフォルニア州法では、
支払い能力があったとしても、店主の断りなく品物をバックに入れる行為を、
窃盗と判断されることが多々あったようで、
ロサンゼルス市警がこの容疑で多くの黒人を逮捕していた事例が、
実際に起きていたようです。

結局・・

 

・15歳の黒人少女ハーリンズに、万引きの意思があったのか?
(裁判では確定していない)

 

・トゥが殴打されたのは事実だが、しかし、
少女の後頭部めがけて引き金を引く必要があったのか?
(結果、過失致死という判決)

 

・オレンジジュースの値段は1.79ドル(約200円)、
黒人少女がわずか2ドルという金額で命を落とした事実と、
加害者の量刑が軽く済んでしまうという不平等な現実を、
アメリカの黒人社会に突きつける事件となりました。

(ラターシャ・ハーリンズ事件の概要は、こちらに載っています。
wikipedia-ラターシャ・ハーリンズ

 

ラターシャ・ハーリンズ事件を題材にした映画
U-NEXT
「マイ・サンシャイン」
今なら視聴可能
Netflix
「ラターシャに捧ぐ 〜記憶で綴る15年の生涯〜」
定額料金で視聴可能

 

おじさんの感想

おじさんの声
おじさんの声
『復讐の家』の感想

 

最初は、
何も考えずにタイトルだけで手に取ってみた小説でした。

 

復讐の家

 

日本語のタイトルとしては、少し変な感じを受けましたけど、
「実際に起きた事件を基に」
ということでしたので、
読んでみよう、そんな軽いノリだったんですよね。

 

で、
何も調べずに読み進めていって、
小説の中で、ショーンの姉が過去に殺されているという描写にぶち当たった時、
初めて「実際に起きた事件:ラターシャ・ハーリンズ事件」を調べてみたんです。

 

そうしたら、ここから、
読み進めるのが異様にキツくなってしまいました。

 

「実際に起きた事件」とほぼ同じように描かれていましたし、

 

何より、

 

加害者側からの視点が描かれていて、

 

正直、

 

感情移入する相手を完全に見失ってしまったんです。

 

カッコつけた立ち位置をとるつもりはありませんけど、

 

「答えなんか出せない・・・」

 

という、なんとも歯痒い感情に支配されて・・・。

 

面白い、面白くない、
おすすめです、とか、
考えさせられる物語、だとか、
何を書いても陳腐な言葉にしかなりません。

 

善悪がハッキリ、白黒ハッキリ、
この状態がどれだけなんだろうと、ただただ認識させられてしまいましたね。

 

ステフ・チャ『復讐の家
「実際に起きた事件」を知った上で、読み進めた方が良いのか、
「実際に起きた事件」を知らずに、読み進めた方が良いのか、
私には判断できません。

 

最後に

 

実際に起きた事件」を題材にした小説、
ステフ・チャ『復讐の家を紹介させていただきました。

個人的に、小説をよく読むのですが、
大きな疲労感を感じる読後になった小説は久しぶりです。

「実話を基に」「実際に起きた事件を基に」

気持ちの良い読後になる物語もあるんですけど、
復讐の家はそうはなりませんでしたね。

本当に疲れました・・・。

もし、読み進めてみようと思った方がいましたら、
ゆっくり淡々と、少しずつ読み進めることをおすすめします。

ではまた。

 

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