医療小説『告知』、久坂部羊が描く「在宅医療」の壮絶な現実を短編集で

2020年12月2日

 

ユーモアを交えながら、
フィクションとして描かれている医療小説なら、

ワクワクドキドキしつつ、
楽しく読み進められますけど、残念ながらこの小説は無理です・・・。

久坂部羊の『告知

在宅医療」の壮絶な現場を、

ノンフィクション・・・ですか?
実際にあった話?

と、勘ぐってしまうほどのリアルな現実を描いている作品です。

医療小説『告知』、久坂部羊が描く「在宅医療」

 

告知 久坂部羊

告知』 6つの物語からなる短編集

綿をつめる
自宅で亡くなるとはどういう事なのか?
在宅医療のリアルな現実
医師、看護師、在宅医療に携わる者たちの想い
医療の本質は、患者の尊厳を大切にする事

罪滅ぼし
アルツハイマー型認知症の妻を持つ夫の話。
仕事に没頭し続けてきた夫、妻へのケアも酷いものだったが、
在宅医療に関わる医師、看護師らの訪問を受けて、徐々に改心していく。
在宅医療とは、医師、看護師と、患者の家族がとことん向き合う事

告知
「先生、わたしの病気は、治りますかな」
67歳という若さで、骨髄のガンで末期。
このストレートな質問に、ストレートで答えられる医師はそういない。
答えていいものかどうかすら・・・。
終末期医療在宅医療
目を背けない、それが答えかもしれない。

アロエのチカラ
末期の患者を持つ家族の気持ち、まっすぐなその気持ちに嘘はない
サプリメント代替医療
無駄だと分かっていても、家族の気持ちを踏みにじれない。
神に祈る者もいれば、誇張した広告に祈りを託す者もいる。
批判なんて、出来るわけがない

いつか、あなたも
心の病は時として、家族を巻き込み、医師、看護師も巻き込む。
言葉や行動に振り回されたとしても、
ひたすらに向き合っていく、医療現場に存在しているのはそれだけ。
それは、在宅医療でも一緒

セカンド・ベスト
治療法も予防法も無い難病
徐々に動けなくなり、食事すら・・・、最後には自発呼吸も困難に。
「体は動かなくても、心は、自由
自分の未来が決まっているとしたら、
動けなくなって苦しんで、最後は呼吸が止まる・・・。
日本の医療界、そして、安楽死問題
目を背ける訳にはいかない

〜『告知』〜

 

・一ノ瀬院長
世田谷の「あすなろクリニック」の院長。
在宅医としての長い経験を持っている医師。

・三沢医師
大学病院と国立医療センターで3年間研修した内科医
あすなろクリニック」に来たばかりの新米医師28歳

在宅医としての経験値が豊富な一ノ瀬と、
新米医師の三沢が働く「あすなろクリニック」。
看護師達の助けを借りながら、終末期医療安楽死問題など、
在宅医療を通して描かれている、医療の壮絶な現実

本作は、私の在宅医療の経験に基づいた小説です。
医療には本当につらい場面が多い
喜びや感動もありますが、現場では厳しい現実に直面することが少なくはないです。

特に在宅医療では、
治らない病気や老いを相手にし、
最終的には死を支えることが仕事になるので、基本的にハッピーエンドはありません
暗い話ばかりで恐縮ですが、やがて訪れる最期に備えるために、
少しでも参考になれば著者としてそれ以上の喜びはありません。

文庫本あとがき 久坂部羊

 

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『告知』を読んだ方達のレビューを、紹介します

 

 

『告知』を読んだAさんのレビュー

在宅医療の現場とはこんなにも壮絶なのか。
医療関係者、病の人やその家族の辛さ、厳しさは想像を絶します。
著者が医者であるだけに、生々しく伝わってきます。
いい作品でした。

 

 

『告知』を読んだBさんのレビュー

久坂部さんにしては、ブラック部分のない医療小説でした。
在宅医療に携わっている方の話を聞くこともありますが、
生々しさと苦労が伝わってきます。
普段は人に勧めにくい久坂部さんですが、これは多くの人に読んで欲しい作品です。

 

 

『告知』を読んだCさんのレビュー

この連作短編集は、医者である作者が実際に経験した事を基に描かれています。
そのリアルが苦しくもありますが、
自分の知らない世界を知る事の出来る「本」だからこそ、の、
読み応えある一冊でした。

 

 

『告知』を読んだおじさんの感想

 

久坂部羊医療系小説は個人的に好きで、
最新の文庫が発売されれば必ず読んでいます。
ブラックユーモアを楽しめる作品も多く、気軽に楽しめる作品もあるんですけど、
この『告知』はなかなかそう上手くはいきませんでした。

 

本当にリアルを感じてしまう小説です。

 

在宅医療に関する知識はほぼ、私にはありませんが、
1度だけ入院経験があるので、患者として病院にお世話になったことがあります。
2週間ちょっとの入院、
最初のうちは痛みを伴っていましたから、それどころではないんですけど、
痛みが薄らいでくると、
ベッドの上にいるだけの生活が苦痛になるんです。
暇で暇で。
退院許可が出ない、勝手に外に出る訳にはいかないし、
飲み物、食べ物も制限されていて、
自由なんてほとんどありませんでした

 

すいません、話が飛んでしまいました。
告知』を読んでいた時、自分の入院していた時の感情や状況を思い出してしまって・・・。
本当にリアルな医療現場を感じられる作品です。
私が医者や看護師さん達に助けられたのは事実、
ですが、
入院期間中、数人の看護師さんにムカついたのも事実です。
自分の体が思うように動かない、自由という言葉の存在を否定したくなる気持ち、
病気になると、体だけではなく、心にも傷を負うんですよね。どうしようもありません。

 

医療現場の現状を知っているとは言いませんけど、
そこに存在しているリアルは、この小説から感じることが出来ます。
目を背けてはいけない現実、目を背けたくなる現実、在宅医療の現場は壮絶です。
久坂部羊の『告知』、
オススメさせていただきます。

 

 

 

久坂部羊のおすすめ医療系小説

久坂部羊(1955年7月3日〜)は、
日本の小説家、推理作家、医師です。

おすすめの医療系小説は、

刊行年 発行元 タイトル
2005年4月 幻冬舎文庫 廃用身
2007年7月 幻冬舎文庫(上下巻) 破裂
2008年9月 幻冬舎文庫 無痛
2012年5月 幻冬舎文庫(上下巻) 神の手
2017年3月 朝日文庫 悪医
2017年2月 集英社 テロリストの処方
2017年2月 幻冬舎 院長選挙
2017年11月 新潮社 カネと共に去りぬ
2018年10月 幻冬舎 告知

2003年に「廃用身」で作家デビュー
第2作「破裂」は、現代版「白い巨塔」と評されています。

2014年、「悪医」で第3回日本医療小説大賞受賞

現在も週に一回、健診センターに趣き診療を行い、
週に二回、大学で看護師などを目指す学生達の指導を行なっている医師であり、
作家さんです。

医師としての経験
在宅医療に従事した経験から生み出された『告知』、
医療現場の壮絶な現実を感じられる作品です。

 

最後に

 

フィクションとして読み進めることの出来ない、

壮絶な現実を突きつけられる医療小説久坂部羊の『告知』を紹介させて頂きました。

院長選挙」や「テロリストの処方」とは、
また違う色合いを感じさせる作品になっています。

在宅医療」のリアルな姿を突き付けられるような物語。

私はリアルに、
自分の入院していた時の状況や気持ちを思い出しながら、
この『告知』を読み進めていました。

なんか、
考えさせられる作品でしたね。できたらもう2度と、入院はしたくありません。

ではまた。

 

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