ドラマ『横溝正史シリーズⅡ・八つ墓村(1978年版)』キャスト/伝説/あの映画版との違い/感想

2023年7月19日

1938年(昭和13年)に起きた事件、
津山事件(津山三十人殺し)から着想を得て横溝正史が書き上げた小説、
八つ墓村

この長編推理小説は、
1971年に角川文庫の横溝正史本として刊行され、
今現在でも、その物語は多くの人に認知されています。

特に映像化された八つ墓村は有名です。

映像化された『八つ墓村

✅ 映画版八つ墓村
1951年版(監督:松田定次、“金田一耕助役”:片岡千恵蔵)
1977年版(監督:野村芳太郎、“金田一耕助役”:渥美清)
1996年版(監督:市川崑、“金田一耕助役”:豊川悦司)

✅ ドラマ版八つ墓村
1969年版(“金田一耕助役”:金内吉男)
1971年版(“金田一耕助役”:登場せず)
1978年版(“金田一耕助役”:古谷一行)
1991年版(“金田一耕助役”:古谷一行)
1995年版(“金田一耕助役”:片岡鶴太郎)
2004年版(“金田一耕助役”:稲垣吾郎)
2019年版(“金田一耕助役”:吉岡秀隆)

映画版が3作、ドラマ版が7作、
今までに映像化されたのが10作品八つ墓村は数多く擦られてきました。
(ちなみに、横溝作品で映像化された数が1番多いのは「犬神家の一族」の11作品)

この八つ墓村の、
1978年版ドラマを初視聴、1977年版映画を再度視聴しましたので、
違いを含め、紹介させていただきます。

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ドラマ『横溝正史シリーズⅡ・八つ墓村(1978年版)』キャスト/伝説

ドラマ『横溝正史シリーズⅡ・八つ墓村(1978年版)』

(画像引用元:U-NEXT)

  • エピソード1「第1話」〜46分〜
  • エピソード2「第2話」〜46分〜
  • エピソード3「第3話」〜46分〜
  • エピソード4「第4話」〜46分〜
  • エピソード5「第5話」〜46分〜

【放送】
1978年4月8日〜5月6日まで、TBS系列でテレビドラマとして放送

【原作】
横溝正史「八つ墓村」

【企画】
角川春樹事務所

【監督】
池広一夫

【脚本】
廣澤榮

【エンディング曲】
茶木みやこ「あざみの如く棘あれば」

 

キャスト

【キャスト(役名)】
古谷一行(金田一耕助:私立探偵)

荻島真一(寺田辰弥亀井陽一

鰐淵晴子(森美也子

中村敦夫(田治見要蔵田治見久弥

松尾嘉代(田治見春代

毛利菊枝(田治見小竹

深海なつ(田治見小梅

長門勇(日和警部

津山登志子(よろず屋の娘

永井智雄(久野医師

草薙幸二郎(里村慎太郎

神崎愛(井川鶴子

北村英三(井川丑松

内田朝雄(諏訪弁護士

白木万理(濃茶の尼

ドラマ『横溝正史シリーズⅡ・八つ墓村(1978年版)』
まず目を引くのは、古谷一行さんが若い!
金田一耕助役”としては格好良すぎる感じはありますけど、はまり役と言えるのではないでしょうか。

森美也子役”の鰐淵晴子さんと、
田治見春代役”の松尾嘉代さんが超綺麗。

あと、個人的に「おっ!」と思ったのは、
諏訪弁護士役”の内田朝雄さん。
あの「仁義なき戦い」シリーズで“長老大久保役”を演じていた俳優さんです。
方言的にも近いものがあって、変に懐かしく感じてしまいました。

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八つ墓村の伝説(ドラマ)

ドラマ『横溝正史シリーズⅡ・八つ墓村(1978年版)』の中で、
森美也子”が“寺田辰弥”に語る〈八つ墓村伝説〉です。

〈八つ墓村という名前の由来になった伝説

永禄9年、出雲の富田城の尼子義久が毛利元就に降伏した時、
その尼子一族で尼子義政という武将が、7人の家来を連れて、密かに落ち延びた。」

「伝説によるとその一行は、馬2頭に3000両の黄金を積んで、
田治見家のある村に着いた。」

「村人は、毛利がたの提出した報奨金に目がくらみ、
それ以上に、馬に積んできた3000両の黄金を欲した。」

「そしてある日のこと、
村人達は次々と8人の落ち武者を襲い、惨殺。」

「強烈な恨みと怨念を抱きながら死んでいった8人の首を取り、
その死体を川へ投げ込んだ。」

「その時から、
この川の流れは真っ赤な血の色となり、
何日も何日も真っ赤な川の流れが続いたと言われている。」

「村人達は、
8人の侍の怨念の為せるワザと恐れおののいて、
8人の霊を祀る8つの墓を作り、八つ墓明神と崇めることになった。」

この伝説、
〈8人の侍の怨念、呪い、祟り〉と、
〈田治見要蔵の32人殺し〉といった部分を利用した連続殺人事件が巻き起こるドラマ、
それが、
『横溝正史シリーズⅡ・八つ墓村(1978年版)』の全5話です。

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映画『八つ墓村(1977年版)』

映画『八つ墓村(1977年版)』

(画像引用元:U-NEXT)

【監督】
野村芳太郎

【原作】
横溝正史「八つ墓村」

【脚本】
橋本忍

【製作】
野村芳太郎、杉崎重美、織田明

【音楽】
茶川也寸志

【撮影】
川又昂

【編集】
太田和夫

【日本公開】
1977年9月23日

 

キャスト

【キャスト(役名)】
萩原健一(寺田辰弥

渥美清(金田一耕助

小川真由美(森美也子

山崎努(多治見久弥多治見要蔵

山本陽子(多治見春代

市原悦子(多治見小竹

山口仁奈子(多治見小梅

中野良子(井川鶴子

加藤嘉(井川丑松

井川比佐志(井川勘治

下條正巳(工藤校長

藤岡琢也(久野医師

浜村純(森荘吉

任田順好(濃茶の尼

大滝秀治(諏訪弁護士

花沢徳衛(磯川警部

下條アトム(新井巡査

綿引勝彦(矢島刑事

夏八木勲(尼子義孝

田中邦衛(落ち武者

吉岡秀隆(少年時代の寺田辰弥

昭和の名優達が数多く出演している映画『八つ墓村(1977年版)』

萩原健一さんの格好良さが際立ちますけど、
それ以上に、
山崎努さん演じる〈要蔵の32人殺し〉が強烈過ぎて、
桜舞い散る道を走っているあの姿と音楽は、今でも脳裏に焼き付いて離れません。

この映画がテレビで初放送された1979年10月12日、
その夜、
〈要蔵の32人殺し〉を観てしまった子供達は眠れなかったでしょうね。
怖過ぎますよ・・・。

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八つ墓村の伝説(映画)

映画『八つ墓村(1977年版)』の中で、
森美也子”が、
寺田辰弥”と“金田一耕助”に語る〈八つ墓村伝説〉です。

〈八つ墓村伝説

「昔、400年ほど前の戦国時代、
この村に落ち武者が8人やってきた。」

「その8人というのが、
毛利との戦に敗れた尼子一族、今の島根県の広瀬あたりの、
尼子義孝とかいう人が大将で、
村の山外れに住み着いてしまった。」

「村人達は落ち武者を恐れ、
最初の頃、夜も眠れずに警戒していた。
しかし、落ち武者達は荒れ地を切り開いて畑にし、野菜などを作り、炭を焼き、
侍の生活をやめ、百姓として生活するようになっていた。」

「この様子を見て村人達は安心し、
お互いどちらからともなく行き来をし、交流を深めていった。」

「ところが、
【落ち武者があれば出せ、もしその中に尼子義久の弟の義孝がいれば、莫大な恩賞をとらわす】という、
毛利がたの知らせが届いた。」

「そこで、村の代表4人が協議し、落ち武者達を夏祭りに招くことにして、
鎮守の森の広場に集め、村全体でもてなすフリをし、
酒の中に毒を入れて、一斉に襲いかかった。」

「そして、
落ち武者達8人全ての首を取り、晒した。」

「その後、
素戔嗚尊(スサノオノミコト)になっていた村相談の中でも1番若い庄左衛門という、
現在の多治見家の祖先にあたる男が、
8人殺しの首謀者ということで、
毛利の方から莫大な山林の権利を受け、
大変な財産家になった。」

「しかし、
その庄左衛門がある日、突然ってしまった。
急に刀を抜いて何人か村人を斬り、挙句に自分で自分の首を斬り飛ばした。
この時の犠牲者の数が、庄左衛門を入れて8人。」

「この出来事を受け、村人達は祟りに違いないと大騒ぎをして、
犬や猫みたいに捨ててあった8つの死骸を丁重に埋め、
祠を建て、お祀りをした。」

この〈八つ墓村伝説〉と、
〈八つ墓明神の祟り〉といった部分を取り入れ、
怨念や祟りを利用した連続殺人事件が起こりますけど、
最終的には、
〈怨念、呪い、祟り〉現実となって〈これは祟り〉といった感じで終わるのが、
映画『八つ墓村(1977年版)』です。

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ドラマ版と映画版の違い(ネタバレ注意)

ドラマ『横溝正史シリーズⅡ・八つ墓村(1978年版)』と、
映画『八つ墓村(1977年版)』
ほぼ同時期に製作された作品ですけど、
内容的には大きく違います。

単純な部分から言うと、犯人は一緒だけど人数が違う。
(単独犯か複数犯)

私がだいぶ違うと思ったのは、まず、

〈金田一耕助の役割〉

古谷一行さんが出演していたドラマ版では、
金田一耕助”が主人公と言える活躍ぶりです。
アグレッシブで人間味があり、風貌的にもまさに“金田一”といった感じ。
その都度推理力を発揮していき、事件を解決へと導いていく様は、探偵そのものでした。

一方で、
渥美清さんが出演している映画版は、
金田一耕助”があくまで補助的な役割を担っています。
派手に動き回るのではなく、事実の裏どりを地道に足を使って淡々とこなして行く感じです。
もの静かで理知的な印象。
勝手なイメージで言うと、古谷一行さんの方がそれっぽいですね。

〈要蔵の32人殺し〉

描き方が全く違います。

ドラマ版では、
村祭りの最中に巻き起こる凶行、村人達は寝込みを襲われた訳ではありません。

かたや映画版は、
寝静まった真夜中に為す術もなく村人達は襲われます。

どちらが怖いかというと、完全に映画版
あのインパクトを超えられるシーンはそうそうありませんね。

要蔵が狂ってしまった原因が、
辰弥の母親にあるという、何とも酷い理由などはドラマ版映画版も一緒です。
(ただ、映画版はちょっと・・・後述します)

 

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〈辰弥の本当の父親〉

ドラマ版映画版も、
辰弥の本当の父親は一緒なんですけど、
重要度が全く違います。

ドラマ版では、非常に重要な役割を担っています。
物語のラストに無くてはならない存在、明らかに必要です。

しかし、
映画版ではそうでもない。
というか、存在そのものが気薄

〈辰弥が要蔵の息子なのかどうか〉といった部分は、ドラマ版映画版重要です。
ただ、
〈辰弥の本当の父親〉という存在は、ドラマ版映画版全然違いました

〈最終的に、怨恨か、祟りか〉

ドラマ『横溝正史シリーズⅡ・八つ墓村(1978年版)』と、
映画『八つ墓村(1977年版)』
最も違う部分が、物語そのものの落とし所、ではないでしょうか。

ドラマ版は基本、
連続殺人事件の真相は、怨恨です。そして複数犯。
〈田治見家への恨み〉と、〈要蔵の32人殺し〉で両親を殺された恨み、
〈呪い、祟り〉といった部分を利用した〈復讐〉がメイン。
オカルト要素はほぼゼロです。

では、映画版はというと、
〈八つ墓明神の祟り〉がメインの物語です。
オカルト要素バッチリな映画となっています。
最後の最後にも取り憑かれておりましたしね。
〈呪い、祟り〉といった部分はしっかりと達成されております。そう解釈せざる終えない。
(要蔵にとって、辰弥の母親が大きな存在だったのは事実でしょうけど、アレは取り憑かれている顔でしょうね)

もっと挙げようと思えばあるんです。
田治見と多治見、
3000両のある、なし、
辰弥の火傷の跡の位置が違う、とか、
殺人現場の状態、
事件後の辰弥がどうなったか、などなど、
ドラマ版映画版ではかなりの違いが存在しています。

まぁ、
両方とも、原作と異なっているようですから、これぐらいに。

気になる方は観比べてみてください。

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2つを観比べたおじさんの感想

おじさんの声
おじさんの声
ドラマ(1978年版)と映画(1977年版)の感想

 

(ドラマ版は事件ものとして、ある意味真っ当)

7.5

 

(映画版のインパクトはドラマ版より上)

8.5

 

「犬神家の一族」のドラマが最近放送されていまして、
全く観ていなかったんですけど、関連記事を目にしてしまい、
「私は断然八つ墓村推し」という変な気持ちが湧き上がったので、今更ながら、
ドラマ『横溝正史シリーズⅡ・八つ墓村(1978年版)』と、
映画『八つ墓村(1977年版)』を視聴しました。

 

ドラマ版は初、映画版は数回、といった感じです。

 

その上で正直に言いますと、

 

やはり、映画版の方が好きですね。

 

勝手にイメージしている“金田一耕助像”というのは、古谷一行さんの方が明らかに近いんです。
探偵というイメージも。

 

物語そのものも、
〈人間が犯した復讐劇〉ですから、ドラマ版の方が事件ものとして真っ当だとは思います。

 

ただ、

 

どちらが面白いかと問われたら、映画版と答えてしまいます。

 

その大きな理由として2つ。

 

1つは、

 

〈要蔵の32人殺し〉の描き方

 

残念ながら、映画版の方が圧倒的です。
画面を通してあの鬼気迫る感じを出し、尚且つ、頭の中へこびり付かせるパワーをドラマ版には感じませんでした。

 

そしてもう1つ。

 

〈辰弥が追いかけられるラストシーン〉です。

 

ドラマ版、怖くなかった・・・。

 

オカルトバリバリな物語と、人間ドラマを比べるのは間違っておりますけども、
ドラマ版のラストシーン、
「立ち向かえるだろ」と思ってしまって・・・。

 

映画版で立ち向かえとは思いませんよ、怖すぎますから。
アレを見せられたらそりゃ・・・。

 

迫力と怖さといった点で、映画版の方が良かったなと。
(辰弥の本当の父親の使い方はドラマ版が上、でしたけどね)

 

辰弥のその後、後味が悪いのはドラマ版だったりしますが・・・。

 

そんなこんなで、
もちろんドラマ版も面白かった。観る価値は間違いなくあります。

 

しっかりとした事件ものを視聴したいのならドラマ版、
オカルトバリバリでも良いから迫力と怖さを味わいたいなら映画版、
気になる方は暇潰しに視聴してみてください。

 

どちらも見放題となっています。

 

このドラマ(1978年版)と、
映画(1977年版)を含め、
横溝作品が30作品も視聴可能となっているのがU-NEXTです。
全て見放題

キャンペーンを利用すれば0円ですので、
気になる方はチェックしてみてください。

 

最後に

「犬神家の一族」キッカケではありましたけど、
ドラマ『横溝正史シリーズⅡ・八つ墓村(1978年版)』と、
映画『八つ墓村(1977年版)』を視聴したので、紹介させていただきました。

昭和のドラマと映画、
演出が古臭いとか、
映像が古臭いのはもう致し方ないので、
ある程度目をつぶって再生してみてください。

そうすれば、今でも結構楽しめると思いますよ。

「原作が同じなのに、こんなに違うの?」なんて楽しみ方でも良いですしね。

金田一耕助”の違いを楽しむのもアリ・・・。
(好き嫌いが分かれそうですが)

ではまた。

 

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