『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のあらすじと感想、「国vs自由」
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正式名称は、
”History of U.S Decision-Making Process on Viet Nam Policy,1945-1968"
「ベトナムにおける政策決定の歴史、1945年ー1968年」
「ペンタゴン・ペーパーズ」
ベトナム戦争を分析し記録したアメリカ国防総省の最高機密文書の通称です。
簡単に言うと、
アメリカ政府が国民に隠しておきたかったベトナム戦争の真実を、
事細かく詳細に執筆された暴露本だと思っていただければよろしいかと。
例えば、
ベトナム戦争介入の引き金となった1964年8月に起こった「トンキン湾事件」。
北ベトナム軍にアメリカ海軍の駆逐艦が攻撃され、アメリカが報復処置として本格的に軍事行動を開始することになったこの事件、
1部は捏造です。
そのように、「アメリカ政府の嘘」を暴露しているのが、
「ペンタゴン・ペーパーズ」。
そして、
「そんなものを公表して何の利益があるんだ?」、地位や名誉や金を守ろうとする隠蔽派と、
「国民には真実を知る権利があり、報道の自由は権力に屈しない!」という基本理念に基づいてジャーナリスト達が戦った真実の物語を、
スピルバーグが映画化しています。
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『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のあらすじと感想
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(原題:The Post)
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』予告編
監督 | スティーヴン・スピルバーグ |
出演(役名) | メリル・ストリープ(キャサリン・グラハム) |
トム・ハンクス(ベン・ブラッドリー) | |
サラ・ポールソン(トニー・ブラッドリー) | |
ボブ・オデンカーク(ベン・バグディキアン) | |
トレイシー・レッツ(フリッツ・ビーブ) | |
ブラッドリー・ウィットフォード(アーサー・パーソンズ) | |
ブルース・グリーンウッド(ロバート・マクナマラ) | |
マシュー・リース(ダニエル・エルズバーグ) | |
アメリカ公開 | 2018年1月12日 |
日本公開 | 2018年3月30日 |
☆ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞(2017年11月28日)
「作品賞」「主演男優賞(トム・ハンクス)」
「主演女優賞(メリル・ストリープ)」を受賞
・第90回アカデミー賞
「作品賞」「主演女優賞(メリル・ストリープ)」でノミネート
『ペンタゴン・ペーパーズ』のあらすじ
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』あらすじ
ベトナム戦争が泥沼化していたニクソン大統領政権下の1971年、
あるスクープ記事が”ニューヨーク・タイムズ”に掲載される。
軍事アナリストのエルズバーグがベトナムの地に足を踏み入れ、現地の状況を踏まえて事細かく作成された国防総省の最高機密文書、
「ペンタゴン・ペーパーズ」。
エルズバーグらが作成したこの報告書は、コピーされて新聞社に持ち込まれ報道、
大きな話題となってアメリカを駆け巡った。”ニューヨーク・タイムズ”に先を越された”ワシントン・ポスト”のベン(トム・ハンクス)は、
なんとか自分達の紙面で扱いたく奮闘、
「ペンタゴン・ペーパーズ」のコピー入手を試みることに。そんな中、2回も機密文書を掲載した”ニューヨーク・タイムズ”は、
政府から記事の差し止めを要請され、裁判で差し止めの判決が下ってしまった場合、
今後この「ペンタゴン・ペーパーズ」を扱ってしまうと法律違反となり、
”ワシントン・ポスト”にも大きな被害が及びかねない事態となってしまう。しかし、ベンは諦めなかった。
”ワシントン・ポスト”のボス:キャサリン(メリル・ストリープ)や役員達からの反対を押し切り、
文書のコピーを手に入れようと再度、奮闘することに。そして、エルズバーグと元同僚だった記者バグディキアンが奔走し、
大量のコピーを手に入れ、
”ワシントン・ポスト”の手元にも「ペンタゴン・ペーパーズ」が。”ニューヨーク・タイムズ”に遅れをとっていた”ワシントン・ポスト”、
ようやく自分達の紙面で扱えるようになった。
だが、
政府は裁判を通じて徹底抗戦「機密文書を漏らすな!」
記者達は「国民に真実を知らせろ!」
”ワシントン・ポスト”の役員達は「会社の利益を守れ!」ベン達が奔走して手に入れた最高機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」、
掲載か否か?
国家権力に跪いたままか、国民側と共に歩むのか?
”ワシントン・ポスト”のボス:キャサリンは決断をする・・・。〜『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』〜
監督はスティーヴン・スピルバーグ、
主演メリル・ストリープ、トム・ハンクスという外れようのないキャスト。
1971年に実際に起こった実話を基に製作された映画、
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』。
派手な演出が一切ない硬派なドラマですけど、驚くべき真実が描かれている作品です。
今ならNetflix(ネットフリックス)で視聴可能となっています。
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「ペンタゴン・ペーパーズ」の作成者の1人:ダニエル・エルズバーグ
ダニエル・エルズバーグ(1931年4月7日〜)は、
アメリカの経済学者、核戦略研究者、平和運動家です。実在している人物。
1952年、ハーバード大学経済学部卒業後、ケンブリッジ大学に留学。
1954年、アメリカ海兵隊に入隊。
1957年、中尉で退役。
その後、
ハーバード大学、ランド研究所、アメリカ合衆国国務省に勤務。
1964年、アメリカ国防総省に入り国防次官補ジョン・マクノートンの補佐官。
ベトナム戦争を担当する中で、アメリカのベトナム政策に批判的になって、
元々は強硬派な考え方を改めて慎重派となった人物です。
1971年、
エルズバーグも執筆に加わったベトナム政策決定過程に関する国防総省秘密文書、
「ペンタゴン・ペーパーズ」を”ニューヨーク・タイムズ”や、
”ワシントン・ポスト”などに持ち込んで暴露した張本人、反戦を訴えました。
(参照元:wikipediaーダニエル・エルズバーグ)
国家の秘密をリークしたのがエルズバーグ、
彼がいなかったら、いまだにベトナムの真実は闇の中だったんでしょうね。
このリークによって動き出すことになったのが、
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』に出てくる2人です。
メリル・ストリープ演じるキャサリン・グラハム
キャサリン・グラハム(1917年6月16日〜2001年7月17日)は、
アメリカの新聞社経営者。実在した人物です。
キャサリンの夫フィリップは1961年に”ニューズウィーク”を買収。
(ワシントン・ポスト社が買収)
のちにフィリップは自殺。
キャサリンは1969年以後、
”ワシントン・ポスト”の発行人から社長、そして会長を歴任しました。
(参照元:wikipediaーキャサリン・グラハム)
キャサリン・グラハムのページには、一切「ペンタゴン・ペーパーズ」の記述がありません。
書かれているのは、
ニクソン大統領を辞任に追い込んだ「ウォーターゲート事件」で、
”報道に踏み切った英断を行なった発行人として、彼女の名を一躍有名にした”
そんな記述があります。
ちょっと調べてみますと、
「ペンタゴン・ペーパーズ」が巻き起こした騒動の中心は、
どちらかというと”ニューヨーク・タイムズ”の方で、”ワシントン・ポスト”ではないんですよね。
例えば、
当時の”ニューヨーク・タイムズ”の記者達は、この映画を批判しています。
同紙の描かれ方が軽すぎる、重要な役割を担ったのは”ニューヨーク・タイムズ”。
そんな感じで。
そして、
本作でブラッドリー・ウィットフォード演じるアーサー、
これは架空の人物です。実在しておりません。
1971年当時はですね、
”ニューヨーク・タイムズ”が絶対的な全国紙で、圧倒的にシェアを獲得していました。
かたや”ワシントン・ポスト”は地方紙です。力は強くありません。
エルズバーグが第1に考えたのが”ニューヨーク・タイムズ”、これは自然な流れです。
「報道の自由」を掲げて権力と戦っていた全国紙と、
「政府筋と交流を持つ保守的」な地方紙とでは、その後の影響力に差が出てしまいますからね。
ただ、この「ペンタゴン・ペーパーズ」絡みによって、
劇的に変わったのは”ワシントン・ポスト”ですので(極端に言うと、政府側から国民側へ)、
物語としてこちらを題材にした方が面白い、そんな考えでスピルバーグも”ワシントン・ポスト”を主人公に・・・。
真意はわかりません。
第37代アメリカ合衆国大統領リチャード・ニクソン、
キャサリン・グラハムは彼に大打撃を与え、その後「ウォーターゲート事件」でトドメを刺したことは真実です。
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』でも、その辺りの繋がりは感じられますよ。
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トム・ハンクス演じるベン・ブラッドリー
ベン・ブラッドリー(1921年8月26日〜2014年10月21日)は、
アメリカの新聞記者、”ワシントン・ポスト”紙編集主幹です。実在した人物。
今までの映画作品の中に、ベン・ブラッドリーは複数回登場しています。
公開年 | タイトル | ベン役の俳優 |
1976年 | 大統領の陰謀 | ジェイソン・ロバーズ |
2018年 | ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 | トム・ハンクス |
フロントランナー | アルフレッド・モリーナ |
1976年「大統領の陰謀」は、
監督アラン・J・パクラ、主演ダスティン・ホフマン、ロバート・レッドフォード。
ウォーターゲート事件を調査した”ワシントン・ポスト”の2人のジャーナリストを題材にした、実話を基に製作されたドラマです。
第49回アカデミー賞で助演男優賞(ジェイソン・ロバーズ)、脚色賞、録音賞、美術賞の計4部門を受賞しています。
時代背景的にいうと、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のすぐ後のお話ですね。
2018年「フロントランナー」は、
監督ジェイソン・ライトマン、主演ヒュー・ジャックマン。
1988年の大統領選挙に立候補していたゲイリー・ハート、ケネディの再来と呼ばれていた彼がわずか3週間で失脚、転落していく様を描いた伝記映画です。
政治絡みの実話を基に製作された映画に、実在した人物として、
そして、重要な役割を担った重要人物として描かれているベン・ブラッドリー。
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の中では、ケネディとも親交のあった描写も描かれています。
そこら辺も注目して視聴して頂けると、より楽しめるのではないかと。
『ペンタゴン・ペーパーズ』を観た方達の感想を紹介します
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常に時代を牽引するスピルバーグ。
ドラマの切り取り方がうますぎます。
政治権力と社会的意義の板挟み。女性社長が逆行の中、決断を下します。
定番だけど、新しい。
あとは、戦争シーンとか新聞のプリントをするシーンとか、めっちゃスピルバーグ的。
活版のシーンだけで2時間観られます。
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歴史は素晴らしい。
いつも勇気のある者が勝っています。
報道することによって会社が潰れてしまうリスクを背負ってまでも、報道の自由を守りたかった。
強いては、ベトナム戦争の真実を世間に知って欲しかったんです。
歴史的な実話には魂が宿っていますね。
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難しい内容でしたけど、豪華俳優陣なので観られました。
出演者の名前も顔もめっちゃ覚えにくくて、もう半分よく分かっていなかったですが、最後までいきましたねw
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久々に感動と共に勇気というか、新聞記者になりたかったと思ってしまう作品でした。
トムハンクス、そしてメリルストリープが最高にカッコ良かったですね。
最後にスピルバーグの名前を見て納得。
やはりスピルバーグは偉大な映画監督です。
この映画は是非、各新聞社の新人教育で使って欲しい。
若きジャーナリスト達に夢と希望、勇気を与えること間違いなしの作品だと感じました。
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『ペンタゴン・ペーパーズ』を観たおじさんの感想
![おじさんの声](https://savicevicjenio.com/wp-content/uploads/2019/02/IMG_0209-264x300.jpg)
![おじさんの声](https://savicevicjenio.com/wp-content/uploads/2019/02/IMG_0209-264x300.jpg)
(「プライベート・ライアン」を10点満点とした場合)
ずっと気になっていた映画です。
監督スティーヴン・スピルバーグ、主演メリル・ストリープ、トム・ハンクス、
実話を基に製作された映画。
とりあえず観ておいて損はないだろうと思いながら、月日が経って、
ようやくNetflixで視聴となりました。
簡単に言えば、硬派な社会派ドラマ。
「国家権力」に立ち向かった「報道の自由」を描いた作品です。
派手さはありませんよ。
例えばですね、インディから恐竜にいって、最近「レディ・プレイヤー1」を観ました!
という方達がこれをサラッと視聴してしまうと、
題材が地味過ぎて(描かれているのは物凄い事件ですけど)、ちょっと退屈かもしれません。
むしろ、
「シンドラーのリスト」(ドイツ人実業家オスカー・シンドラーの実話)、
「プライベート・ライアン」(映画は完全なフィクション。ナイランド兄弟の逸話を基に製作)、
「ミュンヘン」(1972年に起きたミュンヘンオリンピック事件を描いた作品)、
「ブリッジ・オブ・スパイ」(弁護士ジェームズ・ドノバンの実話を中心とした作品)、
「リンカーン」(リンカーンの最後の4ヶ月を描いた作品)、
この辺りの濃厚な人間ドラマが描かれているようなスピルバーグ作品を好んでいる方へ、
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』をおすすめしたいですね。
あとは、「スピルバーグ✖︎トム・ハンクス」というほぼハズレ無しコンビなので、
一応観てみようかな?
も、もちろんありです。
「ペンタゴン・ペーパーズ」絡みのアメリカスキャンダルを知らなくても、
この1本で歴史的な概要は把握出来ますし(私もその1人)、
視聴後にイヤな感じを一切残しませんので、
ご自分の視聴してきた歴史映画の1本に加えても損はないと思います。
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のラスト、
ん?
となって、ある事件を検索してしまう事になりますけど、
その事件をある程度知ると、「まだまだ戦っていくんだな、この人達は」、
そんな不思議な気持ち良さも感じられます。
で、気付かされるんですよ、スピルバーグは良いラストを描いたな、と。
今現在なら、
Netflix(ネットフリックス)で視聴可能となっています。
今のうちに『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』に触れてみてください。
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最後に
ベトナム戦争を描いた映画はたくさんあって、有名なのは、
「ディア・ハンター」(1978年)、
「地獄の黙示録」(1979年)、
「プラトーン」(1986年)、
「グッドモーニング、ベトナム」(1987年)、
「フルメタル・ジャケット」(1987年)、
など、ベトナム戦争を戦地から描いた作品が印象深くなっています。
今回紹介した『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』も、
主役は各新聞社、政府の嘘を許さず報道に踏み切ったジャーナリスト達ですけど、
アメリカ国内から見たベトナム戦争を描いているとも言える作品です。
「戦争映画」とは言えませんが、
「ベトナム戦争映画」と言ってしまっても間違いではありません。
仮に、ベトナム戦争が起こっていなかったら、この映画は存在していません。
戦争を始めた国の戦地からの視点なのか、
戦争を始めた国の国内からの視点なのか、
その違いだけですね。
アメリカが本格的にベトナム戦争に介入するキッカケとなった「トンキン湾事件」は1964年、
「ペンタゴン・ペーパーズ」が国民に知れ渡ったのは1971年、
アメリカ軍がベトナムから撤兵したのが1973年、
ベトナム戦争が終結したのは1975年、
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』で描かれている内容は、
「国家権力に立ち向かう報道の自由」と「国内から見たベトナム戦争」です。
ではまた。