七尾与史の「ドS刑事シリーズ」6作目『井の中の蛙大海を知らず殺人事件』
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七尾与史の「ドS刑事シリーズ」の6作目、
『井の中の蛙大海を知らず殺人事件』、
内容が想像できますか?
直訳だと、
「自分の考えが全てだと思い込み、
他の考え方や視点があることを知らず、見識が狭い:殺人事件」
「・・・は?」
こうなりますよね。
一応、内容を掻い摘みますと、
『ドS刑事 井の中の蛙大海を知らず殺人事件』
✅ 「ドS刑事シリーズ」6作目
✅ 事件の舞台は超豪華客船、海の上という密室で巻き起こる爆弾パニック
✅ 主人公:黒井マヤの周りで巻き起こる恋の三角関係の行方?!
(気持ちとしては、四角関係にしてあげたい)
「豪華客船」と「爆弾魔」がキーワードとなっている物語の副題が、
『井の中の蛙大海を知らず殺人事件』、
読む前から悩まずに、読み終えてから無理やり、当てはめてしまったほうが楽しい、
そんな「ドS刑事シリーズ」の6作目でした。
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シリーズ6作目『井の中の蛙 大海を知らず殺人事件』
・「主な登場人物」
「黒井マヤ」
警視庁捜査一課殺人犯捜査第三係に所属する巡査部長。25歳。
「死体が見たいから」という理由で刑事になった超美人。
事件の真相を誰よりも早く突き止める千里眼を持ち、どんな犯人もマヤには太刀打ちできないが、
”殺人現場マニア”で”冷酷非道”、死体の遺留品を持ち帰りコレクションをするような、
”猟奇的趣味”を持っている。
ホラー映画の巨匠ダリオ・アルジェントの大ファン。
肉体的武器:超絶な美貌と、強烈なデコピン
「代官山脩介」
浜松中部警察署強行犯係に所属している時にマヤと出会う。
今は警視庁捜査一課殺人犯捜査第三係所属の巡査。33歳。
かなりの「イケメン」で、マヤからは「代官様」とあだ名をつけられ、今ではそれが定着。
何をしでかすか分からないマヤの行動を常に気にしながら、
「マヤの推理したことを推理する仕事」を厳命されている。
階級はマヤよりも下。
特徴:人一倍強い正義感と、マヤの婿候補トップを走る
「浜田学」
警視庁捜査一課殺人犯捜査第三係所属のエリートキャリア警部補。23歳。
”ドM体質”で”天使のような容姿”を持った童顔青年。
マヤに大怪我を負わされても、人格全否定という言葉の数々を浴びても、
常にマヤを「姫様」と呼び崇拝。
階級は、代官山やマヤよりも上。
特徴:絶対に死なない不死身体質、マヤの婿候補最下位を独走中
「黒井篤郎」
黒井マヤの父親で、警察庁次長という超権力の持ち主。
マヤを溺愛し、娘への批判、楯突いたりする刑事に対しては超権力を発動し、
その不満分子を完全に消し去ってしまう。
特徴:娘の幸せを心から願う狂気の父親、婿判定に厳しい
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あらすじ
『井の中の蛙大海を知らず殺人事件』あらすじ
長い夢から覚めた代官山は、
自分がどこにいるのか、なぜ自分がここにいるのか、全く分からずに、
記憶の奥深くを探っていくと・・・。
「事件解決後、職場の連中と慰労会、二次会まで参加し、マヤと浜田とタクシーに同乗して帰っている最中、飲み過ぎが祟って車中で気分が悪くなった時、マヤに渡された”飲み過ぎに即効くドリンク”を一気飲み・・・」
代官山が覚えている最後の記憶。
そして、
代官山は、自分が豪華客船の上に”拉致”されたことを知る。
その豪華客船には、
代官山の他に、黒井マヤ、浜田学、マヤの父親と母親も乗船。
”ハネムーンの下見”のために”拉致”された代官山が乗る豪華客船、
処女航海で香港へ向かう「リヴァイアサン」。
しかし、
「リヴァイアサン」には、
「マモー」と名乗る爆弾魔が仕掛けた時限爆弾が・・・。
さらに、
「リヴァイアサン」に乗船していた大物女優の死体が発見され・・・。
黒井マヤ、代官山、浜田のトリオが「殺人事件」を。
犯人を刺激しないよう隠れて乗船してきた爆弾処理班が「爆弾」を。
「爆弾危機」と「殺人」が同時に起こった「リヴァイアサン」。
マヤたちの運命は・・・。
〜『井の中の蛙大海を知らず殺人事件』〜
「マモー」という名の「爆弾魔」に狙われている「リヴァイアサン」の中、
「殺人事件」と「爆弾」を追うマヤ達と爆弾処理班。
マヤを取り巻く三角関係の行方を気にしながら、
事件の真相に迫る豪華客船爆弾パニック物語、
『ドS刑事 井の中の蛙大海を知らず殺人事件』、
楽しく一気に読み進められるシリーズの6作目でした。
おじさんの感想
![おじさんの声](https://savicevicjenio.com/wp-content/uploads/2019/02/IMG_0209-264x300.jpg)
![おじさんの声](https://savicevicjenio.com/wp-content/uploads/2019/02/IMG_0209-264x300.jpg)
一応、先に言っておきますと、
マヤを取り巻く三角関係というのは、
マヤ、代官山、爆弾処理班の1人、ですので、
浜田ちゃんは入っておりません。個人的には浜田ちゃん一推しなんですけどね。
(絶対にないと思いますが)
この”三角関係”と”豪華客船”と”爆弾魔”がキーワードとなっている今作、
「ドS刑事シリーズ」6作目、
『井の中の蛙大海を知らず殺人事件』。
時限爆弾のタイムリミットが迫る中、
逃げ場のない”海上という密室”で大活躍するマヤ達一行。
6作目もいつも通り、
強烈なキャラクター達に引っ張られながら、
大変な事件が巻き起こっているにも関わらず、楽しい、
そんな1冊でした。
ただ、
本格ミステリー、ダークなサスペンスなどを好む方にはおすすめしません。
「軽い」と言っているわけではなくて、
「楽しい」が勝ってしまうから、
そんな理由です。
それと、
「ドS刑事シリーズ」を、途中から読み進めるのもおすすめしません。
黒井マヤと代官山の出会いから今まで、
浜田ちゃんがこれまでに受けてきた致死量タップリのバイオレンス、
この辺をシリーズ当初から読み進めておいた方が、
確実に楽しめるのは間違いありません。
もったいないですからね。
是非、
「ドS刑事シリーズ」を1作目から読み進めてみてください。
6作目まできた時、
「浜田ちゃんを応援」しつつ、
「今回はどんな致死量タップリを読めるんだろう」と、
ドSになった自分を感じられるのではないか・・・良いか悪いか分かりませんが。
「ドS刑事シリーズ」、本当に楽しいですよ。
七尾与史「ドS刑事シリーズ」
七尾与史(1969年6月3日〜)は、
日本の推理作家、歯科医師です。
第8回「このミステリーがすごい!」大賞に応募した「死亡フラグが立ちました!」が、
最終選考まで残り、大賞を受賞とはいきませんでしたけど、
”隠し玉”として同作で作家デビュー。
その後、「死亡フラグシリーズ」と同様に、
ヒットシリーズとなった「ドS刑事シリーズ」。
すでに7作が発表されています。
No. | 「ドS刑事シリーズ」 |
1 | 「風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件」 (文庫化) |
2 | 「朱に交われば赤くなる殺人事件」 (文庫化) |
3 | 「三つ子の魂百まで殺人事件」 (文庫化) |
4 | 「桃栗三年柿八年殺人事件」 (文庫化) |
5 | 「さわらぬ神に祟りなし殺人事件」 (文庫化) |
6 | 『井の中の蛙大海を知らず殺人事件』 (文庫化) |
7 | 「二度あることは三度ある殺人事件」 (ハードカバーのみ) |
「タイトル、ふざけてね?!」
と思ってしまいそうな副題が、全てに含まれておりますけども、
これが不思議としっくりくるんですよね。慣れ、でしょうか?
七尾ワールドにどっぷり浸かり過ぎた感が・・・。
そんな七尾ワールド全開の「ドS刑事シリーズ」、
妙なタイトルに慣れてしまう可能性はありますけど、
”楽しむ読書”には最適なシリーズです。
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1作目:「風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件」
「ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件」
あらすじ
静岡県浜松市。
浜松中部警察署では、浜松市内で男女が生きたまま焼き殺されるという、
放火殺人事件の帳場が立っていた。
新米刑事の代官山は、
本部(静岡県警)に警視庁から出向中の美人刑事:黒井マヤとコンビを組んで、
この事件を追うことに。
しかし、マヤは「死体に萌える」体質でやる気ゼロ。
やる気がない割には、
マヤが「この事件はまだ続いていく」と推理した通り、第2第3の事件が・・・。
接点のない被害者達、
事件を追いかけ続けていた代官山が辿り着いた「悪意のバトン」。
”死体マニア”で推理力抜群の美人刑事:黒井マヤと、
”人一倍正義感が強い”イケメン新米刑事:代官山がコンビを組んだ最初の事件。
「ドS刑事シリーズ」の第1作目、
「風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件」、
マヤと代官山の出会いとスタート、2人の今後の展開を楽しむためにも、
ここから読み進めて欲しい、そんな1冊です。
2作目:「朱に交われば赤くなる殺人事件」
「ドS刑事 朱に交われば赤くなる殺人事件」
あらすじ
警視庁捜査一課殺人犯捜査第三係の”黒井マヤ”、”代官山脩介”、”浜田学”、
トリオがスタートしたシリーズ2作目。
「敗者に死を」
とあるクイズ番組で準決勝を戦っていた2人:瓜生と阿南。
敗者となった瓜生は、喉を一直線に掻き切られて殺害されてしまった。
脅迫状の存在を隠していた2人、殺された1人。
「敗者に死を」
クイズ番組の決勝戦を戦う2人:阿南と弥生。
同じ脅迫状を受け取っていた2人はともに隠蔽し、弥生は行方不明に。
そして、
阿南の周りで次々に発見される、喉を掻き切られた遺体の数々。
首切りを「悪魔祓い」と称しているカルト教団「M教団」の存在が浮かび上がり・・・。
連続首切りという非常に猟奇的な事件を追うことになる、
”黒井マヤ”と”代官山脩介”と”浜田学”のトリオスタートなシリーズ2作目。
暗く陰鬱なストーリーになるはず、なんですが、
「ドS刑事シリーズ」をなめてはいけません。結局、「楽しい」と。
ちなみに、
今作で”浜田ちゃん”は、
120針以上の大怪我、内臓にも散々なダメージを負い瀕死に。
で、次の3作目。
透き通った天使のような眼差しで”浜田ちゃん”登場。
3作目:「三つ子の魂百まで殺人事件」
「ドS刑事 三つ子の魂百まで殺人事件」
あらすじ
マヤが、”死体マニア”や「死体に萌える」体質になった、
過去の出来事、そのルーツが明かされるシリーズ3作目。
東京・立山で見つかった、無数のスイーツに囲まれた遺体、
犯人に無理やりスイーツを食わされ続け、胃袋破裂で亡くなった女性。
「スイーツ食べ過ぎ殺人事件」の被害者となった女性に、
悪い評判はほぼなかったが、
1人だけ気になる証言をした人物がいた。
その人物によると、
彼女は中学生の頃、イジメの加害者で、そのイジメの被害者は摂食障害になり、
過食症の末、自殺したという。
「スイーツ食べ過ぎ殺害事件」の遺体に高得点を付けたマヤは、
過去にも類似した事件があったことを思い出し、独自に捜査を進めていく。
5年前に浜松で起きた「電気椅子殺人」、
3年前に浦和で起きた「まぶた切除殺人」、
そして、
その線から浮かび上がってきた容疑者・・・。
マヤのルーツ、マヤが刑事を目指した理由も判明するシリーズ3作目。
「スイーツ食べ過ぎ殺人事件」の被害者を、
映画「セブン」”大食”の罪で「食わされ続け絶命」した被害者を思い出しつつ、
読み進めた「三つ子の魂百まで殺人事件」。
猟奇的な事件が連続しておりますけども、
読後はやはり「楽しい」となってしまう今作。
”浜田ちゃん”を手厚くバイオレンスするマヤも健在です。
4作目:「桃栗三年柿八年殺人事件」
「ドS刑事 桃栗三年柿八年殺人事件」
あらすじ
現在マヤ達が追いかけている連続殺人事件。
過去にマヤの父親が追い続けた連続殺人事件に絡む現在と過去、
この2本立てとなっているシリーズ4作目。
「双子連続殺人事件」
現在マヤ達が追いかけている猟奇的な殺人事件。
双子で首を取り替える、双子で体を分け合って繋ぎ合わせる・・など、
”死体マニア”のマヤはウキウキとこの事件を追いかける。
(こちらはこちらで解決)
「若い女性連続殺人事件」
マヤの父親:黒井篤郎が若かりし刑事時代に遭遇した連続殺人事件。
この事件、
現在のマヤ達一行が慰安旅行で訪れている寂しい町に繋がっていき、
過去と現在が入り乱れ「後味の悪さ」を残す事件となってしまう。
「双子」と「若い女性」に繋がりはないが、
マヤの名前の由来が明らかになるシリーズ4作目。
前半で描かれている猟奇殺人「双子連続殺人事件」と、
後半(メイン)で描かれている「若い女性連続殺人事件」に繋がりがなく、
2本の別物を読み進めたような感じになるシリーズ4作目です。
前半は「ドS」らしい物語、
後半は「ドS」っぽくない物語で、少し拍子抜けしてしまいますけど、
シリーズファンとして押さえておくべきですね。
我らが”浜田ちゃん”の登場が少なくても、追っておかないと。
今後も”致死量タップリ”を楽しみたいですから。
5作目:「さわらぬ神に祟りなし殺人事件」
「ドS刑事 さわらぬ神に祟りなし殺人事件」
あらすじ
とうとう、
マヤの父親:篤郎と、マヤの美しすぎる母親:羊子の前で、
マヤにプロポーズをさせられそうになる代官山。
しかし、事件発生でこの状況をなんとか回避し、マヤと代官山は現場へ向かう。
「慎重な捜査をしろ」・・・篤郎から注意を受けつつ。
「冤罪」
先月、ニュースで大きく取り上げられた冤罪事件。
警察関係者として、これ以上イメージダウンをさせてはならない、
そんな思いから篤郎は、代官山へ発破をかけて見送っていた。
マヤと代官山は現場へ到着、
雑居ビルで発見された男性の絞殺死体。
捜査を続けていくと、
「被害者は”怨霊”に怯えていた」という証言を得る。
この奇妙な事件、捜査線上に容疑者が浮かび上がってくるが、不可解な点も・・・。
現実にあってはならない「冤罪」と、
現実に起こっている殺人事件が絡み合っていくシリーズ5作目。
今作はシリーズ中珍しく、
「冤罪」という重いテーマが核になっている物語です。
もしかしたら、本格ミステリー色が一番濃くなっていると言えるかもしれません。
「ドSシリーズ」を読み進めてきたファンとしては、
考えさせられる内容だったな〜といった印象でした。過去にあまりなかったんですけどね。
悪い意味じゃありませんよ。
「楽しい」けど「複雑な読後感」といった感じで。
そして、読者を、
その「楽しい」気持ちにさせてくれる存在は、相変わらず”浜田ちゃん”。
マヤのパシリであり、サンドバックとして優秀で、
無駄に博学な知識豊富なこの天使は、
「冤罪」という重いテーマの物語の中で唯一、息抜きを与えてくれる存在です。
読み逃すなんてことはできませんね。
最後に
6作目の『井の中の蛙大海を知らず殺人事件』をメインに、
七尾与史の「ドS刑事シリーズ」を紹介しようと書き始めた記事だったんですけど、
気づいたら”浜田ちゃん”メインのような記事に・・・。
どうしても書きたくなってしまうんですよね。
個人的にこのシリーズで1番好きなキャラクターですから。
マヤをめぐる三角関係には入れてもられない4番手、
最下位独走中にも関わらず、誰よりも怪我多き男、そして、
この4人の中で1番役職が上という無駄キャリア組。
いつの日か、
七尾さんが”浜田ちゃん”メインの物語を生み出してくれる、
そう願いつつ、終わりたいと思います。
ちなみに、
「ドS刑事シリーズ」7作目、
『二度あることは三度ある殺人事件』はハードカバーで発売中です。
私は文庫化したシリーズ作品しか読んでおりませんので、まだ未読。
読んだら、この記事に書き足しておきます。
ではまた。
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