平居紀一『甘美な誘拐』、第19回「このミス」大賞の文庫グランプリを受賞した群像劇

2021年6月10日

2002年、
宝島社、NEC、メモリーテックの3社が創設したノベルス・コンテスト、
「このミステリーがすごい!」大賞(略称「このミス」大賞)。

2020年、
第19回「このミス」大賞の文庫グランプリを受賞したミステリー、
甘美なる誘拐

「このミステリーがすごい!」大賞

2002年からスタートしたノベルス・コンテスト

賞金として、大賞作品1200万円、文庫グランプリ(優秀賞)200万円

第19回から優秀賞を「文庫グランプリ」に名称変更

新人作家に触れる機会としてバッチリな賞

文庫グランプリはですね、
いわば2位グループ、大賞ではないんですけど、評価は高い、
そんな感じの位置です。

平居紀一甘美なる誘拐文庫グランプリの1つ、
そして、初読みの作家さんでした。

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平居紀一『甘美なる誘拐』あらすじと感想

甘美なる誘拐』平居紀一

第19回(2020年)「このミステリーがすごい!」大賞
タイトル(著者)
大賞 「元彼の遺言状」
(新川帆立)
文庫グランプリ 「暗黒自治区」
(亀野仁)
甘美なる誘拐
(平居紀一)
隠し玉 「クロウ・ブレイン」
(東一眞)
「臨床法医学者・真壁天 秘密基地の首吊り死体」
(高野結史)
「静かに眠るドリアードの森で 緑の声が聴こえる少女」
(冴内城人)
「こちら副業推進部、事件です」
(阿部考二)
最終候補 「悪魔の取り分」
(柊悠羅)

 

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あらすじ

甘美なる誘拐』あらすじ

ヤクザ見習いの2人
零細暴力団・麦山組の組員見習い、真二と悠人の2人は、
麦山組のフロント企業の社員として、幹部の荒木田にこき使われていた。
しょぼい仕事ばかりで金もなく、
冴えない日常が続く毎日・・・だったのだが、
ある日、他殺体を発見してしまい、真二と悠人の日常が変わる。

父:浩一と娘:菜々美△ 
調布で零細自動車部品販売会社を営む植草浩一とその娘菜々美。
母の死後、親子2人で頑張ってきた会社だったが、経営は苦しくなってきていた。
そんな中、
複合ビル建設計画に絡んで、社屋の売却を求める話が舞い込んできた。
結局、その話に乗らなかった父娘。
・・・ヤクザからの嫌がらせ、度重なる災難、
浩一と菜々美は追い詰められる。

◼️ 教祖の孫娘が誘拐された?!
神奈川県桐ヶ谷市にある宗教法人ニルヴァーナ。
着々と信者を増やしつつ、勢力を拡大させていた。
ある日の朝、
教祖の孫娘:長尾春香を中学校に送り届けるため、警護に付いていた萩尾ナオミは、
黒いワゴン車から逃げている若い女を目撃。
春香をその場に留まらせ、若い女を助けようと対処していたが・・・。
ほんの少しの間、ナオミが目を離したすきに、
春香の姿は忽然と消えていた。

このと◼️ 、3つが徐々に絡み合って、

衝撃のラストへ!

甘美なる誘拐

 

 

『甘美なる誘拐』を読んだ方達の感想

男性の声
男性の声
『甘美なる誘拐』の感想

 

タイトル通りの誘拐事件の他に殺人事件も絡めて、内容盛りだくさんの物語です。
伏線の回収も良くできていて、驚かされました。
身代金の受け取り方法も面白かったです。
ただ、序盤が長く感じられてしまい、そこだけがマイナスですかね。

 

男性の声
男性の声
『甘美なる誘拐』の感想

 

アッという間に読了。最初から最後まで飽きることなく読めた1冊です。
なんとなく伊坂幸太郎さんの作品の雰囲気があり、最後に色々な謎が一気に解けてスッキリ。
心に悪い感じが残らない、気持ちの良い本でした。

 

男性の声
男性の声
『甘美なる誘拐』の感想

 

初読みの作家。惜しいと思いました。
構想は良いのに構成がイマイチで、中盤までのテンポの悪さと分かりにくさがあり、もう少しメリハリが欲しいところ。
ともあれ、次回作を是非読んでみたいと思わせる力はありました。

 

男性の声
男性の声
『甘美なる誘拐』の感想

 

第19回このミス大賞の文庫グランプリ受賞作。
感想としては、導入部分が長すぎます!個人的にはマイナス評価になってしまいましたね。

 

おじさんの感想

おじさんの声
おじさんの声
『甘美なる誘拐』の感想

 

いつも通りの流れで手にとった小説です。

 

「このミス」大賞関連だから、初読みの作家さんというのは関係なく、
「一応、読んでみよう」と、
平居紀一『甘美なる誘拐を読んでみました。

 

エンタメ感抜群で楽しめた作品でしたね。

 

内容は、
複数の物語が徐々に1つにまとまっていく群像劇タイプ。
ガイ・リッチー監督作の「ロック、ストック〜」や「スナッチ」タイプの物語です。

 

まぁ、そこと比べるのは間違っていますけど。
映像と活字ではやはり、大きな壁が存在しておりますから。

 

とはいえ、甘美なる誘拐を読んだ方達もおっしゃっていましたが、
導入部分が長いと感じてしまうのは致し方ありません。
私も途中で何を読んでいるのか、ページを巻き戻して読み返したこと数回、
ちょっとだけ整理しながら読み進めていました。

 

最終的にバチっと伏線を回収する群像劇ですので、
導入部分でしっかりとした説明(伏線)をしておかないと、オチが弱くなりますしね。
気持ち良さが半減してしまいます。

 

そういう意味では、
しっかりと前半部分、物語の導入部分に集中して読み進めていれば、
最後の回収を迎えた時に、
爽快感を伴った読後を体験できるはずです。
(宝くじ部分もお楽しみに)

 

サラッと読み進めるよりも、
ガッツリと集中して読み進めることをおすすめ、
そんな甘美なる誘拐でした。

 

 

歴代「このミス」大賞の2位グループ

「このミステリーがすごい!」大賞
歴代の2位グループも楽しめる作品が多いです。ちょっと表にしてみますと、

「このミス」大賞の2位グループ:第1回〜第10回

タイトル(著者)
第1回
(銀賞・読者賞)
「逃亡作法 TURD ON THE RUN」
(東山彰良)
第2回
(優秀賞・読者賞)
ビッグボーナス
(ハセベバクシンオー)
第3回 該当作なし
第4回
(特別奨励賞・読者賞)
「殺人ピエロの孤島同窓会」
(水田美意子)
第5回
(優秀賞)
シャトゥーン ヒグマの森
(増田俊也)
「当確への布石」
(高山聖史)
第6回
(優秀賞・読者賞)
「呪眼連鎖」
(桂修司)
第7回
(優秀賞)
「毒殺魔の教室」
(塔山郁)
第8回
(優秀賞)
「パチプロ・コード」
(伽古屋圭市)
第9回
(優秀賞)
「ラブ・ケミストリー」
(喜多喜久)
「ある少女にまつわる殺人の告白」
(佐藤青南)
第10回
(優秀賞)
「僕はお父さんを訴えます」
(友井羊)

第1回〜第10回までの2位グループはこのようになっています。

全部は読んでおりませんけど、
読んだ中で1番のおすすめは、ハセベバクシンオーの「ビッグボーナス」か、
増田俊也の獣害パニック「シャトゥーン ヒグマの森」です。

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「このミス」大賞の2位グループ:第11回〜第19回

タイトル(著者)
第11回
(優秀賞)
「秘密結社にご注意を」
(新藤卓広)
「「童石」をめぐる奇妙な物語」
(深津十一)
第12回 該当作なし
第13回
(優秀賞)
「いなくなった私へ」
(辻堂ゆめ)
深山の桜
(神家正成)
第14回
(優秀賞)
「たまらなくグッドバイ」
(大津光央)
第15回
(優秀賞)
「京の縁結び 縁見屋の娘」
(三好晶子)
「県警外事課 クルス機関」
(柏木伸介)
第16回
(優秀賞)
「筋読み」
(田村和大)
「感染領域」
(くろきすがや)
第17回
(優秀賞)
盤上に死を描く
(井上ねこ)
第18回
(優秀賞)
「幽霊たちの不在証明」
(朝永理人)
第19回
(文庫グランプリ)
「暗黒自治区」
(亀野仁)
甘美なる誘拐
(平居紀一)

第11回〜第19回までの2位グループはこのようになっています。

こちらも全部を読んだわけではないんですが、
エンタメを楽しみたいなら甘美なる誘拐
自衛隊のリアルなミステリーを読み進めるなら神家正成の「深山の桜」をおすすめします。

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最後に

 

第19回「このミステリーがすごい!」大賞
文庫グランプリを受賞した平居紀一甘美なる誘拐を紹介させていただきました。

映画化されたら面白そうな伏線回収型群像劇、
長〜い前フリを集中して読み進めておけば、ラストでガッツリとピースがはまりますので、
エンタメとして楽しめると思います。

登場人物たちのグループは多過ぎず、言っても3つですから。
3つが2つになって、2つが1つになって、ハイ!
って感じです。
序盤だけ集中、ですね。

ではまた。

 

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