平居紀一『甘美な誘拐』、第19回「このミス」大賞の文庫グランプリを受賞した群像劇
2002年、
宝島社、NEC、メモリーテックの3社が創設したノベルス・コンテスト、
「このミステリーがすごい!」大賞(略称「このミス」大賞)。
2020年、
第19回「このミス」大賞の文庫グランプリを受賞したミステリー、
『甘美なる誘拐』。
「このミステリーがすごい!」大賞
✅ 2002年からスタートしたノベルス・コンテスト
✅ 賞金として、大賞作品1200万円、文庫グランプリ(優秀賞)200万円
✅ 第19回から優秀賞を「文庫グランプリ」に名称変更
✅ 新人作家に触れる機会としてバッチリな賞
文庫グランプリはですね、
いわば2位グループ、大賞ではないんですけど、評価は高い、
そんな感じの位置です。
平居紀一の『甘美なる誘拐』も文庫グランプリの1つ、
そして、初読みの作家さんでした。
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平居紀一『甘美なる誘拐』あらすじと感想
『甘美なる誘拐』平居紀一
第19回(2020年)「このミステリーがすごい!」大賞 | |
賞 | タイトル(著者) |
大賞 | 「元彼の遺言状」 (新川帆立) |
文庫グランプリ | 「暗黒自治区」 (亀野仁) |
『甘美なる誘拐』 (平居紀一) |
|
隠し玉 | 「クロウ・ブレイン」 (東一眞) |
「臨床法医学者・真壁天 秘密基地の首吊り死体」 (高野結史) |
|
「静かに眠るドリアードの森で 緑の声が聴こえる少女」 (冴内城人) |
|
「こちら副業推進部、事件です」 (阿部考二) |
|
最終候補 | 「悪魔の取り分」 (柊悠羅) |
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あらすじ
『甘美なる誘拐』あらすじ
◯ ヤクザ見習いの2人
零細暴力団・麦山組の組員見習い、真二と悠人の2人は、
麦山組のフロント企業の社員として、幹部の荒木田にこき使われていた。
しょぼい仕事ばかりで金もなく、
冴えない日常が続く毎日・・・だったのだが、
ある日、他殺体を発見してしまい、真二と悠人の日常が変わる。
△ 父:浩一と娘:菜々美△
調布で零細自動車部品販売会社を営む植草浩一とその娘菜々美。
母の死後、親子2人で頑張ってきた会社だったが、経営は苦しくなってきていた。
そんな中、
複合ビル建設計画に絡んで、社屋の売却を求める話が舞い込んできた。
結局、その話に乗らなかった父娘。
・・・ヤクザからの嫌がらせ、度重なる災難、
浩一と菜々美は追い詰められる。
◼️ 教祖の孫娘が誘拐された?!
神奈川県桐ヶ谷市にある宗教法人ニルヴァーナ。
着々と信者を増やしつつ、勢力を拡大させていた。
ある日の朝、
教祖の孫娘:長尾春香を中学校に送り届けるため、警護に付いていた萩尾ナオミは、
黒いワゴン車から逃げている若い女を目撃。
春香をその場に留まらせ、若い女を助けようと対処していたが・・・。
ほんの少しの間、ナオミが目を離したすきに、
春香の姿は忽然と消えていた。
この◯と△と◼️ 、3つが徐々に絡み合って、
衝撃のラストへ!
〜『甘美なる誘拐』〜
『甘美なる誘拐』を読んだ方達の感想
タイトル通りの誘拐事件の他に殺人事件も絡めて、内容盛りだくさんの物語です。
伏線の回収も良くできていて、驚かされました。
身代金の受け取り方法も面白かったです。
ただ、序盤が長く感じられてしまい、そこだけがマイナスですかね。
アッという間に読了。最初から最後まで飽きることなく読めた1冊です。
なんとなく伊坂幸太郎さんの作品の雰囲気があり、最後に色々な謎が一気に解けてスッキリ。
心に悪い感じが残らない、気持ちの良い本でした。
初読みの作家。惜しいと思いました。
構想は良いのに構成がイマイチで、中盤までのテンポの悪さと分かりにくさがあり、もう少しメリハリが欲しいところ。
ともあれ、次回作を是非読んでみたいと思わせる力はありました。
第19回このミス大賞の文庫グランプリ受賞作。
感想としては、導入部分が長すぎます!個人的にはマイナス評価になってしまいましたね。
おじさんの感想
いつも通りの流れで手にとった小説です。
「このミス」大賞関連だから、初読みの作家さんというのは関係なく、
「一応、読んでみよう」と、
平居紀一『甘美なる誘拐』を読んでみました。
エンタメ感抜群で楽しめた作品でしたね。
内容は、
複数の物語が徐々に1つにまとまっていく群像劇タイプ。
ガイ・リッチー監督作の「ロック、ストック〜」や「スナッチ」タイプの物語です。
まぁ、そこと比べるのは間違っていますけど。
映像と活字ではやはり、大きな壁が存在しておりますから。
とはいえ、『甘美なる誘拐』を読んだ方達もおっしゃっていましたが、
導入部分が長いと感じてしまうのは致し方ありません。
私も途中で何を読んでいるのか、ページを巻き戻して読み返したこと数回、
ちょっとだけ整理しながら読み進めていました。
最終的にバチっと伏線を回収する群像劇ですので、
導入部分でしっかりとした説明(伏線)をしておかないと、オチが弱くなりますしね。
気持ち良さが半減してしまいます。
そういう意味では、
しっかりと前半部分、物語の導入部分に集中して読み進めていれば、
最後の回収を迎えた時に、
爽快感を伴った読後を体験できるはずです。
(宝くじ部分もお楽しみに)
サラッと読み進めるよりも、
ガッツリと集中して読み進めることをおすすめ、
そんな『甘美なる誘拐』でした。
歴代「このミス」大賞の2位グループ
「このミステリーがすごい!」大賞、
歴代の2位グループも楽しめる作品が多いです。ちょっと表にしてみますと、
「このミス」大賞の2位グループ:第1回〜第10回
回 | タイトル(著者) |
第1回 (銀賞・読者賞) |
「逃亡作法 TURD ON THE RUN」 (東山彰良) |
第2回 (優秀賞・読者賞) |
「ビッグボーナス」 (ハセベバクシンオー) |
第3回 | 該当作なし |
第4回 (特別奨励賞・読者賞) |
「殺人ピエロの孤島同窓会」 (水田美意子) |
第5回 (優秀賞) |
「シャトゥーン ヒグマの森」 (増田俊也) |
「当確への布石」 (高山聖史) |
|
第6回 (優秀賞・読者賞) |
「呪眼連鎖」 (桂修司) |
第7回 (優秀賞) |
「毒殺魔の教室」 (塔山郁) |
第8回 (優秀賞) |
「パチプロ・コード」 (伽古屋圭市) |
第9回 (優秀賞) |
「ラブ・ケミストリー」 (喜多喜久) |
「ある少女にまつわる殺人の告白」 (佐藤青南) |
|
第10回 (優秀賞) |
「僕はお父さんを訴えます」 (友井羊) |
第1回〜第10回までの2位グループはこのようになっています。
全部は読んでおりませんけど、
読んだ中で1番のおすすめは、ハセベバクシンオーの「ビッグボーナス」か、
増田俊也の獣害パニック「シャトゥーン ヒグマの森」です。
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「このミス」大賞の2位グループ:第11回〜第19回
回 | タイトル(著者) |
第11回 (優秀賞) |
「秘密結社にご注意を」 (新藤卓広) |
「「童石」をめぐる奇妙な物語」 (深津十一) |
|
第12回 | 該当作なし |
第13回 (優秀賞) |
「いなくなった私へ」 (辻堂ゆめ) |
「深山の桜」 (神家正成) |
|
第14回 (優秀賞) |
「たまらなくグッドバイ」 (大津光央) |
第15回 (優秀賞) |
「京の縁結び 縁見屋の娘」 (三好晶子) |
「県警外事課 クルス機関」 (柏木伸介) |
|
第16回 (優秀賞) |
「筋読み」 (田村和大) |
「感染領域」 (くろきすがや) |
|
第17回 (優秀賞) |
「盤上に死を描く」 (井上ねこ) |
第18回 (優秀賞) |
「幽霊たちの不在証明」 (朝永理人) |
第19回 (文庫グランプリ) |
「暗黒自治区」 (亀野仁) |
『甘美なる誘拐』 (平居紀一) |
第11回〜第19回までの2位グループはこのようになっています。
こちらも全部を読んだわけではないんですが、
エンタメを楽しみたいなら『甘美なる誘拐』、
自衛隊のリアルなミステリーを読み進めるなら神家正成の「深山の桜」をおすすめします。
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最後に
第19回「このミステリーがすごい!」大賞、
文庫グランプリを受賞した平居紀一の『甘美なる誘拐』を紹介させていただきました。
映画化されたら面白そうな伏線回収型群像劇、
長〜い前フリを集中して読み進めておけば、ラストでガッツリとピースがはまりますので、
エンタメとして楽しめると思います。
登場人物たちのグループは多過ぎず、言っても3つですから。
3つが2つになって、2つが1つになって、ハイ!
って感じです。
序盤だけ集中、ですね。
ではまた。
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