中山七里『静おばあちゃんと要介護探偵』のあらすじと感想、シリーズ化しました
新作発表が尋常じゃない速さ、
で知られる中山七里の痛快ミステリー連作短編集、
『静おばあちゃんと要介護探偵』を紹介させていただきます。
『静おばあちゃんと要介護探偵』
✅ 80歳の元女性判事と、70歳の経済界重鎮が”老々コンビ”を組んで、
事件を解決していくミステリー
✅ 5つの物語からなる連作短編
✅ 待望のシリーズ化
中山七里の作品の中でも、
痛快度の高いシリーズがスタートしたと言えるのではないでしょうか。
登場人物のぶっ飛び具合も楽しめますよ。
スポンサーリンク
『静おばあちゃんと要介護探偵』あらすじと感想
『静おばあちゃんと要介護探偵』中山七里
2人の主人公
高遠寺静(こうえんじ しずか)
✅ 日本の歴史上20人目の女性裁判官。
16年ほど前に定年を待たず退官しているが、いまだに法律を語る口調は厳しく、
人を語る口調は優しい。
80歳となった今も、現役捜査陣に頼られる元女性判事。
香月玄太郎(こうづき げんたろう)
✅ 愛知県本山にある通称「お屋敷町」と呼ばれる高級住宅地に建つ、
香月家の当主であり、粗野で頑固な経済界の重鎮。
気性の荒さと口の悪さは他の追随を許さないが、
頭脳のキレも人一倍な70歳。
この2人を主人公とした痛快ミステリー、
5つの短編で構成されている『静おばあちゃんと要介護探偵』。
スポンサーリンク
あらすじ
『静おばあちゃんと要介護探偵』あらすじ
第1話「二人で探偵を」
名古屋法科大学創立50周年の記念講演に招かれた高遠寺静。
講演終了後、立食パーティの最中、突然!
耳をつんざくような轟音とともに、講演会場の窓ガラスが勢いよく破砕。
外に設置されていたモニュメントの像が爆発、
その中から男性の遺体が・・・。
そして、
静と同じ講演に出席していた香月玄太郎。
2人の出会いと最初の事件は、こうして始まった。
第2話「鳩の中の猫」
静は市民団体主催のセミナーでの講演終了後、
ある老人から助けを求められた。
なんでも、同じ町に住む多くの老人が、セミナー詐欺にあい、
額の大小はあるにせよ、総額でかなりの額を詐欺グループに騙し取られてしまったらしい。
そこで、静は、
同じ町に住む老人同士、町内会長にでもまとめてもらい、
被害者団体の設置をとアドバイスした。
その町内会長が残念ながら、香月玄太郎。
第3話「邪悪の家」
静が名古屋法科大学の客員教授に迎えられて2ヶ月。
評判が良かったのか、その後、1年契約となったので、
ウィークリーマンションから引っ越し先を探していたところ、
最良物件が見つかったのだが、香月玄太郎所有の物件だった・・・。
2人が物件のことで話し合っていると、香月邸に相談者がやってくる。
結局またしても、ある事件に巻き込まれていく2人。
第4話「菅田荘の怪事件」
25年ぶりに会った静の同級生が、会った4ヶ月後に遺体となって発見。
同級生が住んでいたのは菅田荘、夫婦揃って一酸化炭素中毒による死亡と判断された。
自殺なのか事件性があるのか、静にはまだ判断ができなかった。
と、その頃、
香月玄太郎の元に、玄太郎が手掛けた住宅のクレームが舞い込んできていた。
ガス漏れ警報機の誤作動なのか、立て続けに3件も同じ症状の報告が。
静の同級生夫婦が死亡したことと、
玄太郎の元に舞い込んできていたクレームが、結局、
1つの事件を解決することに。
第5話「白昼の悪童」
静は法曹関係者と面談をするため、名古屋駅に向かっている最中、
大規模工事をしている建築現場で香月玄太郎と出会う。
「ミッドランドパーク」という地上46階にもなる高層建築に、香月地所も絡んでいるらしい。
その出会いから少し後、
静の目に飛び込んできたニュース。
”「ミッドランドパーク」予定地において、建設中のビルの屋上クレーンから鉄骨が落下し、真下にいたベトナム人労働者1名と、香月玄太郎(70)が病院に搬送された”
玄太郎は無事だったが、ベトナム人労働者は死亡。
その遺体から、妙な手術痕を発見した2人は、
隠されていた真実を知り・・・。
そして、玄太郎は暴れる。
おじさんの感想
新しい文庫が発売されれば、
必ず読み進めている中山七里の小説。
で、いつものように『静おばあちゃんと要介護探偵』を手に取りました。
”老々コンビ”を楽しむ連作短編集”、
非常に読みやすく、朝の通勤時間を5日分使って、
1話1話と、気持ちの良い読書となりましたね。
粗野で口の悪い、でも頭はキレる香月玄太郎と、
玄太郎の10歳年上にも関わらず、玄太郎よりも理知的な元女検事高遠寺静、
この2人のコンビが痛快で、
久しぶりに楽しく読み進められた小説でした。
ただ、読み進めていくと、
途中から、ちょっと玄太郎化していく静の様子も感じられますから、
外で読む際にニヤニヤしないよう、
少し注意が必要です。
電車の中でニヤニヤするのもどうかと・・・。
私のことですけど。
・・・・・・。
この『静おばあちゃんと要介護探偵』、
シリーズの1作目ではあるんですが、完全な新キャラではありません。
以前に別の小説で登場しているんですね。
だからかもしれません、私がスンナリと受け入れられたのは。
玄太郎と静の初登場から順を追って読み進めたいのなら、
『静おばあちゃんと要介護探偵』は後回しが良いと思います。
初登場する小説から読み進めることをおすすめです。
面白い小説を読めればいい、そんな想いが強いのなら、
連作短編という読みやすさもありますから、
『静おばあちゃんと要介護探偵』を手に取ってみてください。
シリーズ2作目がすでにハードカバーで発売中
シリーズ化を楽しむために
中山七里(1961年12月16日〜)は、
岐阜県出身の小説家、推理作家です。
ヒットシリーズといえば、
中山七里のヒットシリーズ
✅ 岬洋介シリーズ(「さよならドビュッシー」など)
✅ 御子柴礼司シリーズ(「贖罪の奏鳴曲」など)
✅ 刑事犬養隼人シリーズ(「切り裂きジャックの告白」など)
✅ 「ヒポクラテスの誓い」シリーズ
(「ヒポクラテスの誓い」「ヒポクラテスの憂鬱」など)
他にもありますけど、
有名なヒットシリーズはここら辺ではないかと。
もしかすると、
シリーズ化された『静おばあちゃんと要介護探偵』も、
ヒットシリーズとして、今後も読者を楽しませてくれる存在になるかもしれません。
より楽しむため、というと大袈裟ですけど、
この『静おばあちゃんと要介護探偵』には、前振り的な物語が存在しています。
時間軸的に少し複雑ですので、
紹介させていただきます。
高遠寺静と香月玄太郎の時間軸
1.「要介護探偵の事件簿」主人公:香月玄太郎
(文庫発売2012年)
2.『静おばあちゃんと要介護探偵』主人公:高遠寺静と香月玄太郎
(文庫発売2021年)
3.「さよならドビュッシー」主人公:岬洋介
(玄太郎が脇役で初登場、文庫発売2011年)
3.「静おばあちゃんにおまかせ」主人公:葛城公彦刑事
(静が裏方的に初登場、文庫発売2014年)
✅ 発売時期は前後しておりますが、
物語の時間軸的にはこんな感じではないでしょうか?
スポンサーリンク
高遠寺静の初登場
高遠寺静の初登場は、
2014年に文庫が発売された「静おばあちゃんにおまかせ」です。
主人公こそ違いますけど、
事件を解決に導くのが”静おばあちゃん”の頭脳、そんな連作短編集。
「静おばあちゃんにおまかせ」の中、
20年以上も前に退官しているとなっているので、
『静おばあちゃんと要介護探偵』の16年前という記述と比べると、
香月玄太郎に出会ってから4年ほど経った時期のお話、
ではないでしょうか。
「静おばあちゃんにおまかせ」
✅ “静おばあちゃんの知恵" “静おばあちゃんの童心"
“静おばあちゃんの不信" “静おばあちゃんの醜聞"、
計4作からなる短編集。
✅ 時間軸的には、
『静おばあちゃんと要介護探偵』後の物語です。
香月玄太郎の初登場
香月玄太郎の初登場は、
岬洋介シリーズ第1作目「さよならドビュッシー」です。
主人公としてではなく、あくまでも脇役として登場。
ただその後、
「さよならドビュッシー」の前日譚「要介護探偵の事件簿」が、
主人公:香月玄太郎の初登場と言えるのではないかと。
こちらは完全に玄太郎のお話ですからね。
ただ、時間軸的には『静おばあちゃんと要介護探偵』よりも前のお話ですので、
読み進める際は、悩まないようにしてください。
「要介護探偵の事件簿」
✅ ”要介護探偵の冒険” ”要介護探偵の生還”
”要介護探偵の快走” ”要介護探偵の四つの署名”
”要介護探偵最後の挨拶”の計5作の短編集。
✅ 時間軸的には、
香月玄太郎が高遠寺静に出会う前の物語です
最後に
中山七里『静おばあちゃんと要介護探偵』を紹介させていただきました。
以前に読んでいた小説の登場人物2人が主人公、
といった物語でしたので、
個人的にはスンナリと入り込めた小説でした。
すでにシリーズ化されていますし、
今後も楽しませてくれそうな”老々コンビ”の痛快ミステリー”、
期待しながら、
「静おばあちゃんと要介護探偵2」の文庫化を待ちたいと思っています。
ではまた。
⇨【文庫本で読む】中山七里のおすすめ小説11選/シリーズもの、胸糞、痛快エンタメあり
⇨ステフ・チャ『復讐の家』あらすじと感想、実際に起きた事件が題材に・・
⇨七尾与史「ドS刑事シリーズ」6作目『井の中の蛙大海を知らず殺人事件』