新シリーズになるかも?中山七里の『能面検事』あらすじと感想、検察ミステリーです
中山七里という作家が今まで生み出してきた強烈なキャラクター達。
読者としては、読み進めるのが楽しくて、
常に続編に期待をしてしまいます。
今回も、新たな強烈なキャラクターを生み出しましたね。
✅ 「岬洋介シリーズ」⇨⇨ピアニスト・岬洋介が主人公のミステリー
✅ 「御子柴礼司シリーズ」⇨⇨悪魔の弁護人・御子柴礼司が主人公のミステリー
✅ 「刑事犬養隼人シリーズ」⇨⇨刑事・犬養隼人が主人公のミステリー
✅ 「ヒポクラテスシリーズ」⇨⇨法医学教室の研修医・栂野真琴が主人公のミステリー
細かく分けるともっとありますが、
有名どころといえば、この辺りのシリーズではないでしょうか。
そして今作、
中山七里が生み出した新たなキャラクターは、後々、
「〜〜シリーズ」として読者を楽しませ続けてくれそうです。
感情が一切読み取れない「能面」のような表情で、
淡々と事実のみを追求する検事が主人公のミステリー。キャラは強烈ですよ。
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中山七里『能面検事』あらすじと感想
『能面検事』中山七里
『能面検事』あらすじ
大阪地検一級検事の不破俊太郎(ふわしゅんたろう)。
不破は30代後半、髪をびっちりと後ろに撫でつけ、
仕立ての良いスーツと相まって一分の隙もない身だしなみで、
常に感情が表に出てこない表情。
陰で「能面」と呼ばれている検事の不破。
そんな不破と行動を共にすることになったのが、
新米事務官の惣領美晴(そうりょうみはる)。
初対面から最悪の印象、感情が一切読めない不破と共に、
美晴は、様々な事件の調べを進めていくことになる。
まずは、大正署に捜査本部が設けられた幼女殺害事件。
捜査本部の見立てとは全く異なる真相を暴き出した。
そして次の事件、不破と美晴は、
西成ストーカー殺人事件の捜査に着手していく。
この事件でも、様々な真実を暴き出していく不破。
容疑者となっている男のアリバイを証明し、
捜査資料の一部が紛失している事実をさらけ出した不破の行動はやがて、
大阪府警を揺るがす一大スキャンダルへ発展してしまう。
それでも無表情で淡々と捜査を続ける不破の元に、
1発の銃弾が襲いかかってくる・・・。
〜『能面検事』〜
『能面検事』は長編小説ですが、
物語の序盤に様々な事件を解決していきながら、大きな事件も連動させて語られていくような、
連作短編のような作りになっています。
主人公は、
「能面」と噂されるほど無表情で感情が読めない検事:不破俊太郎と、
新米事務官として不破と行動を共にする女性:惣領美晴、
このコンビを中心として物語が進んでいくミステリーです。
隠蔽体質の警察組織へ1歩も引かずに、淡々と事実を突き続ける『能面検事』、
中山七里が生み出した新たなキャラクターをお楽しみください。
『能面検事』を読んだ方達の感想
一気読みでした。能面で表情の全くない検事と、感情が表に出てしまう事務官がコンビ。
スピーディーな展開で読みやすかったです。
この作家さんの他の作品も読んでみようと思いました。
登場人物がキャラ立ちしていて、展開も早いのでとても読みやすかったです。でも少し物足りない。
前にも中山作品を読んで「2時間サスペンスみたい」と思いましたが、悪く言えば薄っぺらい感じが本書にもあるように思います。
気楽にミステリーを読みたいという時には、ちょうど良い作品です。
いくつもの事件を進めながら大元の事件が解決されていきます。ワクワクが止まりませんでした。
この2人のコンビをもっともっと読みたいですね!
久しぶりの中山さん。いつもほどのどんでん返しはないけれど、引き込まれて読んでしまいました。
不破検事の能面ぶりに翻弄されながらも、少しずつ距離を詰めて行く事務官の美晴が微笑ましいです。
明らかにされた不破検事の過去には胸が痛んでしまい・・・。
ぜひシリーズ化して、あの弁護士と対決して欲しいですね。
おじさんの感想
中山七里の小説を読み続けていると、
2通りの楽しみ方ができるようになっています。
1つは、
シリーズ物の続きが定期的に生み出されますから、
よく知った主人公の新しい物語を楽しめる。
そしてもう1つが、
新たに生み出された強烈なキャラクターの新シリーズか?
と、期待を抱かせる初物語を楽しめる。
そういった意味では、
この『能面検事』は完全に後者、
強烈なキャラクターの新シリーズ誕生かも?、そんな楽しみ方のできる小説でした。
ということはですね、
中山七里作品を読んだことのない方でも楽しめる小説ではないかと。
シリーズ物の続編だと、
いきなりPART2から読み進めるわけにはいきませんから、
必ずPART1を経てPART2へと、順序立てる必要があります。
その点、この『能面検事』は誰でも即、読み進めていい小説です。
これが始まりの物語ですので。
もちろん、シリーズ化されるかどうかは分かりませんけど、
続編が作られてもおかしくない、強烈なキャラクターの不破検事が誕生、
シリーズ化される可能性は高いと思います。
是非、今のうちから楽しんでおくべきではないかと。
ドラマ化や映画化にも向いている物語の『能面検事』、文庫化された今が読みどきです。
2020年に発売された中山七里作品
中山七里(1961年12月16日〜)は、
岐阜県出身の小説家、推理作家です。
2009年、
「さよならドビュッシー」で「第8回このミステリーがすごい!大賞」の大賞を受賞して小説家デビュー。
以降、怒涛のスピードで新作を発表し続けている「剛の者」と言える小説家ですね。
去年、2020年だけを例にしただけでも、
多数の新作と、多数の文庫が発売されています。
発売 | タイトル(出版元) |
2020年1月 | 「騒がしい楽園」:新作 (朝日新聞出版) |
2020年2月 | 「帝都地下迷宮」:新作 (PHP研究所) |
「ネメシスの使者」 (文集文庫) |
|
2020年3月 | 「夜がどれほど暗くても」:新作 (角川春樹事務所/2020年9月 ハルキ文庫) |
2020年4月 | 「合唱 岬洋介の帰還」:新作 (宝島社) |
「もういちどベートーヴェン」 (宝島社文庫) |
|
2020年5月 | 「カインの傲慢」:新作 (KADOKAWA) |
2020年6月 | 「逃亡刑事」 (PHP文芸文庫) |
「ヒポクラテスの試練」:新作 (祥伝社) |
|
2020年7月 | 「毒島刑事最後の事件」:新作 (幻冬社) |
2020年8月 | 「テロリストの家」:新作 (双葉社) |
「セイレーンの懺悔」 (小学館文庫) |
|
2020年9月 | 「隣のシリアルキラー」:新作 (集英社) |
2020年10月 | 「銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2」:新作 (文藝春秋) |
「笑え、シャイロック」 (角川文庫) |
|
2020年11月 | 「復讐の協奏曲」:新作 (講談社) |
2020年12月 | 『能面検事』 (光文社文庫) |
「境界線」:新作 (NHK出版) |
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新作の小説は毎月発売という離れ業の12冊、
2020年に文庫化されて発売されたのは6冊、
中山七里の小説が計18冊、1年の間にドドっと店頭に並びました。
このスピードは異常です。
中山七里の小説を、私が定期購入の設定をして届けられているような錯覚に陥ります。
恐ろしい人ですよ。
まぁ、ハードカバーの新作は読んでいないので(文庫化されたものだけです)、
完璧なファンとは言い難いんですけど。
それでも2ヶ月に1冊は読み進められる中山七里作品、
試しに読んでみてはいかがでしょうか?
最後に
中山七里が新たに生み出した強烈なキャラクター、
「能面」と噂される検事:不破俊太郎を主人公とした『能面検事』を紹介させていただきました。
いつも書くんですが、
こういう作家さんを好きになっておくと、本当に暇潰しが楽になります。
何を読もうかと悩んだ時、かなりの確率で助けてもらえるんですよね。
気付いたら新作は出ているし、文庫本も発売されていますし。
2021年の今年もまた、
私は中山七里に助けられる1年になりそうです。なんとか暇を潰したい・・・。
ではまた。
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