「復讐」のために「整形」してしまう、ハードボイルド小説
「小説」や「映画」などで、
ストーリーが分かりやすいものの1つとして、「復讐系」をあげることができます。
「復讐系」は至ってシンプルで、
「仇を討つ」、
読者としても視聴者としても、入り込みやすいジャンルの1つですね。
「復讐系」の「小説」
私は、時代背景の古い「小説」をほとんど読みません。
日本で言えば、侍が出てくるような「時代劇小説」みたいなものや、江戸時代あたりを舞台にした「小説」は今までほとんど読んだことが無いです。
別に嫌いという訳ではありませんが、想像しにくくて物語に入っていけないんですよね。好みの問題、それだけでしょうけど。
そうすると結局、まだイメージしやすい昭和後期ぐらいまでが私の守備範囲です。時代背景の比較的新しい「小説」です。
なかなかピンポイントでチョイス出来てないですけどね。
色々なジャンルの「小説」を読んだ気になってはいますが、振り返ってみると、どうも「復讐系」の「小説」を読んでいる頻度が高いような気がします。
「復讐系」の「小説」、読みやすいんですよ。想像しやすいです。
「復讐」ばかりを頭に想像しながら読み進めていると、あまり体に良いとは言えませんが、楽しいのも事実なんで、たまにはまぁいいか、
そんな感じで、「復讐系」の「小説」が増えてしまっています。
「復讐」のために、顔を変える?
「復讐」をメインテーマに話が進んでいく「小説」、数多くありますが、
今回紹介するのは、
顔を変えてまで「復讐」しようとする男の「小説」です。
自ら顔を変えるというよりは、そうせざる負えないというか・・。
「整形」、
おじさんになった私がするなら、シワ消しぐらいでしょうか。今さら顔をガッツリ変えようとは思えません。というか、すでに意味をなさない行為です。
シワが無くなって、お金も無くなる、
で?
そんな感じですよ。
顔をガッツリ変えたら、それはそれでだいぶ人生が変わりそうですが、おじさんになった今、「整形」して別人になるというのは、相当な覚悟がないと出来ませんね。もっと若い頃ならまだしも・・、いや、やっぱり厳しいです。想像できません。
ある程度歳をとって「整形」するというのは、お金があったとしても、相当な覚悟があったとしても難しくて困難な選択です。
その困難な「整形」という選択を、この「小説」では「復讐」のために行います。
「復讐」するために「整形」、ハードボイルドな「小説」
「ダブル」 深町秋生
ネタバレをせずに、軽く紹介します。
薬物の密売で急成長する犯罪組織、その中で頭角を表していた男、
男の弟も組織の一員です。
その最愛の弟、組織の掟を破ってしまいます。そんな弟を男は庇い、組織の制裁を受けることになります。
組織の、冷酷で優しい顔をしたボスに制裁を受け、弟と、男の元恋人までもがボスに殺されてしまいます。男も瀕死の重傷を負いますが、なんとか命だけは助かりました。
奇跡的に回復した男、警察に拾われて犯罪対策課・マル暴の女刑事に1つ提案されます。
「顔と声を変えて、古巣に潜入しろ」
弟と元恋人の仇を討つためだけに、「整形」して全くの別人になった男、
「復讐」。
マフィアやヤクザ、警察までもがグチャグチャに入り乱れて描かれた「ハードボイルド小説」です。
深町秋生について
作家・深町秋生は、ハードボイルド系の「小説」を数多く世に送り出している作家さんです。
「果てしなき渇き」で、第3回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しています。
賞 | 受賞・最終候補作 | 著者 |
大賞 | 果てしなき渇き | 深町秋生 |
サウスポー・キラー | 水原秀策 | |
最終候補 | 血液魚雷 | 町井登志夫 |
パウロの後継 | 深野カイム | |
オセロゲーム | サワダゴロウ |
いつも通り、私は「このミス」大賞で深町秋生を知ることになりました。
それ以降、たくさんの深町秋生小説を読ませていただいています。
その多くが「ハードボイルド小説」ですね。
「小説」を購入する前から、深町秋生に対する印象が出来上がっていますので、安心して手に取ることが可能です。読む「小説」に迷った時、いつも助けてもらっている作家さんの1人ですね。
深町秋生のデビュー作と言える「果しなき渇き」、2014年に映画化されています。
ハードボイルド系の「小説」を好む方には、是非、知っておいて欲しい作家さんです。
この「小説」を読んだ方達の感想を、少しだけ
・「ダブル」を読んだAさん
他の作品を読んでハマった作家さんです。
がっつりディープな世界観。顔と名前を変えて、古巣の犯罪組織へ潜り込み復讐を企てる主人公。
姿を現さない黒幕、暗躍する裏切り者。
最後の最後まで、スリル溢れる展開でした!面白かった!
・「ダブル」を読んだBさん
展開が早くて、続きが気になって新幹線の中で一気読み。
ずっとハラハラしっぱなし。
ここのところハードボイルドを続けて読むことが多かったけど、これだけグイグイ引っ張られるように読み終えたのは久々です。
・「ダブル」を読んだCさん
「果てしなき渇き」でもそうでしたが、読んでいて圧倒的なパワーに引き込まれます。
思えば、この作品の主人公も渇いている。
まるで日本ではないかのような、ハードボイルドなマフィアの世界。炎を燃やしてないと生きていけない、そんな男達に密かに憧れてしまいます。
が、実際はこんな世界に足を踏む入れたくはないです(笑)
・「ダブル」を読んだおじさん
「ダブル」、ハードボイルド系の「小説」です。
銃撃戦などのアクションも盛りだくさんで、濃厚なストーリー展開で読者を飽きさせない魅力的な作品になっています。顔を変えて「復讐」、濃いですよね。
濃すぎるくらい濃い「ハードボイルド小説」ですので、肩の力を抜いて「小説」を楽しみたい方にはオススメ出来ませんが、
「復讐劇」で濃厚なストーリーを楽しめる方、ハードボイルドでダークなカッコ良さを求めている方には自信を持ってオススメ出来ます。
深町秋生の「小説」に触れていないのならば、この機会に1度、読んでみてはいかがでしょうか。
好き嫌いがハッキリと分かれそうな作家さんですが、
深町秋生の「ハードボイルド小説」、楽しめる方、いると思いますよ。
最後に
冒頭でも書きましたけど、
「復讐劇」は、活字で読み進めても、映像として鑑賞しても、
もの凄く分かりやすいストーリーですね。実にシンプル。
読みやすい観やすいだけで「復讐劇」ばかりを追い続ける、
それはそれで結構キツイですから、たま〜にこんな感じのをつまみ食いをしてみる。
私にとってのつまみ食い、「復讐」系の「ハードボイルド小説」、
たまに食べるから全然飽きない、
今の私はこうなっています。
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