深町ワールド全開『ヘルドッグス 地獄の犬たち』、潜入捜査官の戦い

潜入捜査(身分秘匿捜査)というのはですね、
「捜査の過程において、情報や証拠をつかむ目的で機密情報を知り得る立場にいる個人や団体の信頼を得るため、もしくは、
捜査対象からの信頼をすでに得ているものに取り入るために、
自身の身元を偽装したり、または、架空の身元を作り出すような手法。」
簡単に言えば、
スパイ
深町秋生の『ヘルドッグス 地獄の犬たち』で描かれているのは、
そんなスパイの物語です。
能力の高い警察官が、身分を変え、顔を変え、
全ての過去に別れを告げて新しい人間となり、ある組織に潜入。
関東最大の暴力団:東鞘会の一員となった兼高昭吾の目的は・・・。
『ヘルドッグス 地獄の犬たち』あらすじ
『ヘルドッグス 地獄の犬たち』深町秋生
『ヘルドッグス 地獄の犬たち』あらすじ
関東最大の暴力団:東鞘会に若頭補佐となっている兼高昭吾。
高い能力を持った殺し屋として、名を馳せていた。しかし、彼の過去は全て嘘で塗り固められている。
兼高は、密命を帯びた警視庁組対部の潜入捜査官として、
東鞘会に入り込んでいるスパイ、
ヤクザと敵対している警察側の人間。偽の過去をでっち上げ、顔を変え、二の腕には不動明王の刺青、
ヤクザとなって何人もの人間の息の根を止めてきた殺し屋。
完璧な仕事をこなしヤクザ社会でのし上がってきた兼高。
彼の目的は1つ。東鞘会七代目会長:十朱が持っている情報を入手する事。
警視庁を破壊されかねない”秘密”を持っている十朱から、
情報を奪い、闇に葬り去る事が兼高がスパイとなって送り込まれた理由。そのためだけに、全ての過去を捨てて、
上司である警視庁組対部特捜隊の阿内に導かれ、潜入捜査官、スパイとなって東鞘会のヤクザとなっている兼高。
彼に平穏が訪れる事はない・・・。
恐ろしい情報を持っている十朱、
どんな手を使っても十朱を潰そうとする阿内、
そして、
ヤクザと警察の間に挟まれ、自分を見失わないように生き抜く兼高。
彼が辿り着く先に、やはり、平穏は訪れない・・・。〜『ヘルドッグス 地獄の犬たち』〜
深町秋生作品らしい、ハードボイルドなヤクザ社会を舞台とした警察小説。
スパイとなって潜入した兼高、十朱会長に関わるヤクザの抗争、
恐ろしく執念深く、冷酷な作戦をいとも簡単に繰り返す上司の阿内、
男たちの三つ巴の戦いを描いた作品、
『ヘルドッグス 地獄の犬たち』
550ページに及ぶ濃厚な物語です。
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『ヘルドッグス』を読んだ方達の感想


久しぶりの深町さん作品。
以前よりなんだかストーリーが肉付いていて厚みが増した印象を受けます。
警察とヤクザの境目が危う過ぎる主人公とその周囲の人たち、手に汗握る物語。
どっちが善でどっちが悪なのか・・・。
立つ側によって異なる正義が重かったです・・・。
これはこれでもちろん面白かったんだけど、昔のようなバイオレンスよりの旧作品みたいな作品もまた読みたいですね!


作者らしい内容で面白かったです。
漫画を先に読んだしまっていたので、途中まではイメージが抜けませんでしたけど、それでもとても楽しめた作品です。


任侠と公安警察の物語をうまく融合させた作品で読み応えのある1冊になっています。
登場するキャラクターが完成されていて、強くクールで魅力溢れる人物たちが華を添えていました。
何より、主人公の上司が張り巡らす仕掛けが本作をより深い物語へと導いていて、映画化しても相当楽しめる作品だと思います!


ラスト近辺の畳み掛けるようなストーリー展開は圧巻ですね。読む進めるのを止められませんでした。
まぁ、荒唐無稽という部分はあるでしょうけど、その部分も作品を破綻させるまでは至っていません。
警察モノ、ヤクザモノとして非常に面白い作品に仕上がっていると確信しています。
『ヘルドッグス』を読んだおじさんの感想


(人間の執念の深さ、怖いぐらい強烈で恐ろしい)
久しぶりに読んだ深町ハードボイルド、
相変わらず濃厚な物語で、非常に楽しめた作品でした。
『ヘルドッグス 地獄の犬たち』、
主人公の兼高もおすすめキャラなんですけど、個人的には、
兼高を送り込んだ警視庁の上司:阿内の人間性が特におぞましいものになっていて、
物語を読み進める過程で、楽しんで欲しいキャラとなっています。
東鞘会の十朱を追い詰めるその執念、
背筋が凍るほどの策を用い、そして、全てを意のままに操る様は、
軍師とかいうレベルではないですね。
ただの怪物です。
兼高も殺し屋レベルで怪物ですが、
阿内はそれを上回る怪物、常軌を逸した魔物・・・。
そんな上司にヤクザ社会へと潜り込まされた潜入捜査官:兼高、
阿内たち警視庁のターゲット:東鞘会会長十朱、
『ヘルドッグス 地獄の犬たち』で描かれているのは、
そんな男たちの命のやり取り、騙し合いに次ぐ騙し合い、
深町ワールド全開のハードボイルド。
550ページもあるので、簡単に読み進められるとは言いませんけど、
物語に没頭してしまいますから、駆け足でラストまで突っ走ってしまえると思います。
暑苦しい時期ではありますが、
楽しめる時間を少しでも過ごせるよう、願っています。
おすすめ深町秋生作品
深町秋生(1975年11月19日〜)は、
山形県出身の小説家です。
主なおすすめ小説は、
刊行年 | タイトル | 概要 |
2005年 | 果てしなき渇き | 役所広司主演で映画化 |
2010年 | ダブル | 復讐のために整形 |
2011年 | アウトバーン | 米倉涼子主演のドラマ化 |
2016年 | ショットガン・ロード | 577ページのハードボイルド |
探偵は女手ひとつ | シングルマザー探偵 | |
2017年 | PO警視庁組対三課・片桐美波 | 身辺警戒人の女刑事の物語 |
2019年 | PO 守護神の槍 | 身辺警戒人のシリーズ2作目 |
ハードボイルド系の小説が多い深町作品、
この表になっている作品もほぼ、濃厚なハードボイルド系の物語となっています。
その中でも少し色合いが異なっている「探偵は女手ひとつ」と、
読みやすい警察小説「POシリーズ」あたりなら、深町ワールドを体験していない方でも、
すんなりと読み進められる物語ではないかと。
その他はかなりハードモード全開な感じ・・・。
とはいえですね、
薄っぺらい物語は1つも存在していませんので、
ズッシリと濃厚な作品を活字で楽しみたいという方には、
深町秋生作品、深町ワールド全開の小説をオススメしたいです。
今回紹介した『ヘルドッグス 地獄の犬たち』も楽しめるはずです。
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最後に
久しぶりに読んで、やっぱり楽しめた深町ワールド、
『ヘルドッグス 地獄の犬たち』を紹介させて頂きました。
昔の話ですと、
麻薬捜査官などの潜入捜査という話を聞いたこともありますけど、
今の時代もやっているかどうかは分かりませんね。
このネット社会、完全に別人となるのは不可能な気がします。
強大な力が働けば、可能かもしれませんが・・・。
それでも妙にリアルに感じてしまえる物語、
『ヘルドッグス 地獄の犬たち』
読み進めていて非常に楽しかったです。警察権力の怖さも感じられましたしね。
現実ではお巡りさんと距離を置いて、
小説の中だけで警察組織を楽しむ、警察とのベストな距離感です。
ではまた。